室町時代から江戸時代にかけて,九州薩摩の島津氏のもとで開版された種々の書物。同時期の大内氏(大内版)と同じく,島津氏も明と盛んに交易をするとともに,朱子学をはじめ学問や文化に深い関心を示した。1478年(文明10)島津忠昌(1463-1508)は桂庵玄樹を招いて桂樹院を創立したが,桂庵が81年に開版した《大学章句》は,日本における《大学》(四書の一つ)の印行の最初といわれる。同81年には《聚分韻略(しゆうぶんいんりやく)》全5巻が開版されており,薩摩版の初めとされ,国立国会図書館などに現存する。その後もいくつかの開版が知られているが,1616年(元和2)の《黄睦公素書》などをもっていったん中絶し,江戸時代末期になっていくつかの開版がなされた。また,日向佐土原の島津氏のもとでも《聚分韻略》(1530)ほかいくつかが開版されている。
執筆者:上田 弘
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