行動ファイナンス(読み)こうどうふぁいなんす

日本大百科全書(ニッポニカ)「行動ファイナンス」の解説

行動ファイナンス
こうどうふぁいなんす

経済学に心理学的手法を導入した行動経済学を金融分野などに応用した理論。バブル経済の発生など人間行動の非合理性に起因する株式・金融市場の特異な動きを、一定モデルを使って説明する。プリンストン大学教授ダニエル・カーネマンがエイモス・トバスキーAmos Tversky(1937―96)とともに提唱したが、2002年にカーネマンがノーベル経済学賞を受賞してから世界的に注目されるようになった。

 伝統的経済学では、個人は利潤(あるいは満足度)を最大化するため合理的行動をとるとされていたが、行動ファイナンスでは人間は感情的要因や認識・判断能力の限界などのために偏った意思決定をしやすいとの心理学の意思決定理論に基づいている。たとえば、人間は「得」よりも「損」に大きく反応する「損失回避の現象」をとることが知られている。行動ファイナンスは、投資家が自分の都合のよい時点に株価などの比較基準(参照点)を変えがちだというプロスペクト理論prospect theoryを導入。小さな損失は回避するが大きな損失の確定は先送りしがちだったり、直近の経験などに判断が左右されたりする人間行動を説明するのに成功した。また相場上昇を続けると他の投資家と一緒に自分も買いたくなるなど、ほかの人と同じ行動をとりたがるハーディング現象herding phenomenaも合理的に説明した。

 行動ファイナンスは実験的手法を金融分野に初めて本格的に導入し、実験による理論モデルの検証という潮流を築いた。株式・金融分野のみならず、不動産や公共政策など幅広い分野への活用が期待されている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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