アメリカとイスラエルの二重国籍をもつ経済心理学・行動経済学者。イスラエルのテル・アビブに生まれる。ヘブライ大学で数学と心理学を学び、1961年にアメリカのカリフォルニア大学バークリー校で心理学の博士号を取得し、1993年からプリンストン大学教授を務める。2002年に、「経済学に心理学の手法を導入し、不確実性のもとでの人間の判断・意思決定について新たな研究分野を切り開いた」との理由で、V・L・スミスとともにノーベル経済学賞を受賞した。
カーネマンはエイモス・トバースキーAmos Tversky(1937―1996)とともに行動経済学を唱え、不確実性のもとで人間はかならずしも合理的な決定をせず、感情で動くことがあるとする。限定合理性が人間の思考に存在するとし、伝統的な経済学の理論が予想したものから規則正しく外れていることを実証する。また危険回避的な限界効用逓減(ていげん)のベルヌーイ型の効用関数を批判して、直近の経験などが影響するという「プロスペクト理論」(Prospect Theory)を提案し、人間は現状からの「得」よりも「損」に大きく反応する「損失回避の現象」をとるが、損失がきわめて大きくなるとあまり大きな反応を示さないことを明らかにした。
カーネマンの研究は消費者行動論、公共選択の理論、なかでも株価変動やキャピタル・ゲイン(ロス)などを扱う行動ファイナンス理論に幅広く応用されている。
[金子邦彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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