食物などをのせる膳(ぜん)の一種で、方形につくった折敷(おしき)に、檜(ひのき)材を薄くはいだ片木板(へぎいた)を四角に折り曲げて脚にし、継ぎ重ねたのでその名がつけられた。脚には、猪(いのしし)の目形にかたどった眼象(げんじょう)という格狭間(こうざま)を透かしている。眼象を三方にあけてあるのを三方、四方あるのを四方、ないのを供饗(くぎょう)といった。平安時代、饗宴(きょうえん)の席に折敷、高坏(たかつき)などとともに用いられ、白木造りであったが、鎌倉時代以降、朱や黒の漆塗りのものや、蒔絵(まきえ)で装飾したもの、彩絵(いろえ)を施したものなどが現れ、初めのものは高さも低かったが、近世になると脚が高くなった。
[郷家忠臣]
…神仏への供物台,あるいは宴席などでの食膳として用いられる衝重(ついがさね)の一形式。衝重は方形角切(すみきり)の筒形台脚を備えた折敷(おしき)の総称で,《貞丈雑記》によれば,上部の折敷形に台部を衝き重ねるところから衝重の名があるという。…
… 膳は,現在一般に会席膳と呼ばれる方1尺2寸(約36cm)の折敷を除いては,ほとんどが足をつけるか,台に載せた形態のものである。板を折り回した足を折敷の下につけたものを衝重(ついがさね)といい,足の前面と左右両側の3面に繰形(くりかた)をつけたものを三方(さんぼう),4面につけたものを四方と呼んだ。これに対して,大きく格狭間(こうざま)を透かせた台に折敷を載せたものを懸盤(かけばん)といい,藤原氏の氏長者(うじのちようじや)がその地位の標識として朱器とともに伝領した台盤も,この形式のものであった。…
※「衝重」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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