折敷(読み)おしき

精選版 日本国語大辞典 「折敷」の意味・読み・例文・類語

お‐しき を‥【折敷】

〘名〙
① 檜の片木(へぎ)で作る角盆食器などを載せるのに使った。「足打折敷」「平折敷」「角」「そば折敷」などの種類がある。
※延喜廿一年京極御息所褒子歌合(921)「沈(ぢむ)のをしき四つして、銀(しろがね)土器(かわらけ)などぞありける」
紋所の名。①をかたどったもの。

おり‐し・く をり‥【折敷】

[1] 〘他カ四〙 木の枝や草などを折りとって敷く。
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「紅葉おりしきて、まつのこ・くだ物もりて」
[2] 〘自カ五(四)〙 折敷の姿勢をとる。左ひざを立て、右ひざを曲げて腰をおろす。
信長公記(1598)首「三度・四度かかり合ひかかり合ひ折しきて」

おり‐しき をり‥【折敷】

〘名〙 軍隊用語。左ひざを立て、右ひざを曲げ、腰をおろした姿勢。また、その姿勢をとること。
風俗画報‐八一号(1894)口絵の解「折敷(ヲリシキ)号令は伝へられぬ」

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デジタル大辞泉 「折敷」の意味・読み・例文・類語

お‐しき〔を‐〕【折敷】

ひのきへぎで作った縁つきの盆。多く方形で、食器などをのせる。足打ち折敷平折敷すみの折敷そば折敷などがある。

おり‐しき〔をり‐〕【折(り)敷(き)】

左足のひざを立て、右足を折って腰を下ろした構え。

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改訂新版 世界大百科事典 「折敷」の意味・わかりやすい解説

折敷 (おしき)

ヒノキの片木(へぎ)などで作った盆で,おもに食器をのせるのに用いた。語源については〈折敷(おりしき)〉あるいは〈食敷(おしき)〉の略などとする説がある。前者は古くカシワなどの木の葉を折り敷いて食器としたための称,後者は〈食(お)し物〉をのせる敷物の意とする。奈良時代の文献には見いだせないが,平城宮址からは薄い片木の縁(ふち)をつけたものが出土している。完形品はないが,大別して方形角丸(すみまる)につくったものと楕円形のものとがある。平安時代にはいろいろな折敷が使われていたようで,材質,形状をあらわす沈香(じんこう)折敷,浅香折敷,漆塗折敷,朱塗折敷,棒折敷,深折敷,絵折敷,絹折敷などの名称が各種の文献に散見される。これらのうち,碁石を納めた深折敷以外はいずれも酒肴(しゆこう)などの食物をのせたものであった。《延喜式》には机などに敷く〈折敷料〉として〈細布〉〈調布〉〈曝布〉の名が見えるが,絹折敷はそれらと同様,絹を折敷に敷いたものと思われる。《御堂関白記》には羅を張った折敷の例があり,鎌倉時代の《世俗立要集》には〈美麗ノトキハ面バカリニ白平キヌヲヲス〉とある。古制を伝えるものとしては,伊勢神宮日別朝夕大御饌祭や春日大社若宮御祭の神饌をすえる折敷がある。前者はヒノキの白木製で方形角丸,後者はヒノキ製で胡粉彩絵(ごふんいろえ)の方形角切(すみきり)である。絵画資料としては《餓鬼草紙》の酒宴場面に描かれた白木製の簡素なつくりのものが12世紀末ごろの実態を示している。伝世品としては,社寺什器(じゆうき)として大量にしつらえられた俗に根来(ねごろ)塗と称される朱漆塗の折敷が多い。形状は方形,方形角切,方形角丸,方形入角(いりずみ)の4種で,丈の低い縁や底裏に蟻脚(ありあし)や胡桃脚(くるみあし)がつけてある。数ある朱漆塗折敷のうち製作年代のはっきりしているものでは,東大寺の什物であった大仏殿講中寄進の角切折敷が最も古く,弘長2年(1262)の銘をもつ。また,1457年(長禄1)に調進された真清田(ますみだ)神社(愛知県一宮市)の角切,入角2種の朱漆塗折敷が,洗練された和風の伝統を優美な形姿にとどめている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「折敷」の意味・わかりやすい解説

折敷
おしき

食器、杯などを載せる木製方形の盆。細い幅の板で囲って縁としている。平安時代から平常の食事、祝いの宴などに用いられ、形式、材質、加飾によっていろいろな種類がみられる。四隅を切った角切(すみきり)折敷、四角な平折敷、脚をつけた脚付、または足打(あしうち)折敷の形式があり、脚のついたほうを目上の人に用いるのが例である。材質は薄く削った檜(ひのき)板が常で、杉、椽(とち)も用いるが、『うつほ物語』「梅の花笠(はながさ)」に紫檀(したん)、『源氏物語』「若菜」に浅香(せんこう)(香木の一種)、「宿木」に沈香(じんこう)、『紫式部日記』でも沈香を用いたことを伝えている。白木を加飾して、全体に胡粉(ごふん)を施した白折敷、縁青の青折敷、画を描いた絵折敷は祝い事に用いられた。近世には黒漆、朱漆、青漆、溜塗りなどの塗折敷が現れた。

[郷家忠臣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「折敷」の意味・わかりやすい解説

折敷
おしき

食器を載せる食台の一種で,四角でその周囲に低い縁をつけたもの,すなわち方盆のこと。その名は,上古に木の葉を折敷いて杯盤にしていたことが残ったものであるといわれる。高坏 (たかつき) や衝重 (ついがさね) よりは一段低い略式の食台として平人の食事に供されたもので,8寸 (約 24cm) 四方のものを「大角」または「八寸」,5寸 (約 15cm) 四方のものを「中角」,3寸 (約 9cm) 四方のものを「小角 (こかく) 」といい,角 (かど) を切らないものを「平折敷」,四隅の角を切ったものを「角 (かく) の折敷」あるいは「角」と呼び,ほかに足がつけられた「高折敷」「足付折敷」などの種類もみられた。普通の膳をおしきと呼ぶ例は中部・九州地方に残る。

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百科事典マイペディア 「折敷」の意味・わかりやすい解説

折敷【おしき】

細い板を縁に折り回した盆の一種で,古くは神事,儀式に,また平常にも使用されたが,近時は懐石料理の敷膳(しきぜん)に多く用いられる。四隅を切った角切(すみきり),脚のついた脚打,また円形,半円形などがある。
→関連項目三方八寸向付

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食器・調理器具がわかる辞典 「折敷」の解説

おしき【折敷】

薄い板に縁をつけた方形の盆。白木のものは神饌(しんせん)(神への供物(くもつ)にする飲食物の総称)を載せるのに用い、漆(うるし)塗りのものは懐石の膳などに使用する。

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世界大百科事典(旧版)内の折敷の言及

【三方】より

…神仏への供物台,あるいは宴席などでの食膳として用いられる衝重(ついがさね)の一形式。衝重は方形角切(すみきり)の筒形台脚を備えた折敷(おしき)の総称で,《貞丈雑記》によれば,上部の折敷形に台部を衝き重ねるところから衝重の名があるという。その台部の3方に眼象(げんしよう)(格狭間(こうざま))と称する繰形を透かしたものがすなわち三方であり,4方に透かしたものが四方(しほう)である。…

※「折敷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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