デジタル大辞泉
「被く」の意味・読み・例文・類語
かず・く〔かづく〕【▽被く】
《「潜く」と同語源。「かつぐ」とも》
[動カ四]
1 頭の上から覆う。頭に載せる。かぶる。
「頭つきはいと白きに、黒き物を―・きて」〈源・手習〉
2 貴人から褒美に衣服をちょうだいする。また、それを肩にかける。
「白き物どもを品々―・きて」〈源・若菜上〉
3 損害・負担などを引き受ける。しょい込む。
「弟御の無実の難を身に―・き」〈浄・二枚絵草紙〉
4 だまされる。
「片里は今は恋に賢く、年寄女は闇に―・かず」〈浮・一代女・六〉
[動カ下二]「かずける」の文語形。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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かず・くかづく【被】
- ( 「かずく(潜)」と同語源。「かつぐ」とも )
- [ 1 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙
- ① 頭にかぶる。頭上にいただく。頭上に捧げ持つ。頭上にのせ、おおう。
- [初出の実例]「寒き時に曳き蒙(カツク)綿端は」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
- 「Catçugui, gu, uida(カツグ)〈訳〉頭にかぶる。正当な言い方は Cazzuqi, qu(カヅク)である」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ② 貴人から祿(ろく)として衣服をいただいて、それを肩にかける。被物(かずけもの)を頂戴する。
- [初出の実例]「雪の降りしきたるに、かつきて参るもをかしう見ゆ」(出典:枕草子(10C終)八七)
- ③ 被衣(かずき)をかぶって顔を隠す。古く、外出の時、中流以上の婦人がした風俗。
- [初出の実例]「かつきたるきぬをうちのけたるを見れば」(出典:高野本平家(13C前)一)
- ④ 損害を身に引き受ける。だまされて損をする。また、負担する。
- [初出の実例]「闇にても人はかしこく、老いたる姿をかづかず」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)二)
- ⑤ 城などを囲んで攻める。また、攻め落とす。
- [初出の実例]「包(カツグ)レ城」(出典:前田本下学集(室町末))
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ⇒かずける(被)
被くの語誌
( 1 )古今集声点本では「カヅク」「カツグ」両形がみられるが、中世末期には、「日葡辞書」の記述のように「カヅク」が規範的な語形と考えられたようである。和文脈で主に用いられ、漢文訓読で用いられる「カウブル」と対をなす。古く布・水面など、面状のものによって頭部以上を覆う動作を表わす動詞であったと思われる。
( 2 )「カツグ」「カヅク」は、肩によって物を負うという意味の用法が東日本を中心に分布するが、これは中央語では用いられなかったか、極めて勢力の弱いものであったと思われる。→かつぐ(担)・になう(担)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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