日本大百科全書(ニッポニカ) 「解体工事」の意味・わかりやすい解説
解体工事
かいたいこうじ
建造物の取り壊し工事のこと。建て替えまたは新築工事をするときに、在来の建物を取り壊し撤去する工事をいう。日本では古来、木造建築物が主流であったので、木造家屋の改築、移築のみならず、大規模な修理のために解体工事が行われることも多かったが、いずれの場合も、まず建具を外し、屋根瓦(がわら)を降ろし、壁土を落とし、木舞(こまい)や貫(ぬき)を撤去して、小屋組、柱、梁(はり)、軸組を個々の部分に分解する作業またはその過程をさす。明治期以降、石造、れんが造や鉄筋コンクリート構造などの近代建築物が増え、そして近年、それらの取り壊しの必要が生じ始めてからは、解体工事の内容も多様化した。これらの構造の場合、欧米諸国では大きなおもりをクレーンで吊(つ)って振り子のような振動を与え、その反動を利用しておもりを建築物に衝突させて壁体や床版などを破壊する方法がおもに採用されていた。しかし最近の日本では、圧搾空気で駆動するニューマチックハンマーpneumatic hammer(鑿岩機(さくがんき))でれんがやコンクリートを砕くなど、構造体を小さな団塊状のブロックに破砕して撤去する方法がより一般的である。建築物では、もともと多くの部材が結合されて一つの安定した構造体を形成しているため、解体工事に際して、その手順を誤まれば、構造体が予想外の壊れ方をして隣接建物に被害を及ぼしたり、死傷者を出すなど不測の事態を招く危険性がある。今日、わが国では解体工事に伴う騒音や振動、塵埃(じんあい)の発生などを極力防止するなど、つねに安全対策が講じられている。
[金多 潔]