壁土(読み)カベツチ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

壁土
かべつち

小舞(こまい)下地(したじ)土壁に用いる土の意味で、狭義には荒壁(あらかべ)用と中塗り用のものをさすが、広義には上塗り用色土までを含む。ここでは広義に取り扱う。すべて天然に産するもののみであり、加工品はない。[山田幸一]

荒壁土

粘性のある砂混じり粘土で、日本建築学会標準仕様書(JASS)によれば、15ミリ篩(ふるい)を通過する程度のものとされ、一般に荒土(あらつち)とよばれる。しばしば荒木田土(あらきだつち)の呼称が用いられるが、これは関東、東北方面に分布する濃褐色の沖積粘土をさし、東京で仕様書を作成する場合にこの土を記載するので荒土としてもっとも著名となり、あたかも荒壁土の代名詞のように誤用されるようになった。しかし荒壁土はJASS規定に適合するものであれば産地は問わず、通常の山土や、ときには水底の土も使用される。荒壁土は採掘してただちに使用するのではなく、最低でも7日、高級工事では数か月の水合せ(切藁(きりわら)を混入し、あらかじめ練り合わせておく工程)期間を経過させてから荒壁塗りに着手するものである。また土は、土蔵あるいは土塀などに使用されていたものを取り崩して得られる古土のほうが、新しく採掘したものよりも優れているといわれ、高級工事では古土と新土とを混合して使用する。[山田幸一]

中塗り土

荒壁土と同質で10ミリ篩を通過する程度のものであるが、中塗り土は粒の細かい土を必要とするだけに、産地を選ばない荒壁土とは異なり、その地域地域において特定の場所から適当な土を採掘できれば都合がよい。そのような例として、かつて大阪・四天王寺地区から得られた梨目(なしめ)土、現在も京都・伏見(ふしみ)地区から採掘されている粉土(こつち)は著名で、これらの土でていねいに塗り上げた中塗りは、上塗りと見まがうばかりの肌となる。なお中塗りは、塗り厚が薄いので、使用前の水合せの必要はない。[山田幸一]

切返し土

中塗り土をさらに細かくした5ミリ篩を通過する程度のものである。篩粉(ふるいこ)とよぶこともある。上塗りをしたのちにちり切れや貫(ぬき)割れがおこると見苦しいので、高級工事では中塗り施工ののち1年以上経過させ、その面に故障の生じないことを見極めてから上塗りをするのが通例である。その間、建物を使用するのに中塗りのままではあまりに見苦しいという場合に、その上にこの切返し土を塗って、所定期間を経過させ、さらにその上から上塗りをする。しかし切返し土でていねいに塗り上げたものは、土物砂壁水ごねに匹敵する肌をもつので、しばしば上塗りを施さず、そのまま使用し続けられることがある。[山田幸一]

上塗り用色土

京都の聚楽土(じゅらくつち)、稲荷(いなり)土、大阪の大阪土、滋賀の近州白、淡路島の浅黄土など関西に著名な色土が多い。関西は数寄屋(すきや)建築発祥の地として古くから土壁の需要が多く、おのずからこの地方の色土が本場物としての声価を高めたからであり、かならずしもここの地質が他にぬきんでていたためではない。したがって関西と同様の地層をもつ地域では、今後同種の土が発見される可能性もある。しかし関東では良質の色土は得がたく、わずかに東京近辺に根岸土が知られているだけで、粘土含有分なども関西のものに比べて劣る。
 色土は、土物砂壁、大津壁の材料として(すさ)、石灰などと組み合わせ使用される。一般に粘土含有量60%以上のものは大津壁に、それ以下のものは土物砂壁に適するといわれる。[山田幸一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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