翻訳|rock drill
打撃または切削によって,主として爆破用の孔を岩石にあける機械。打撃によるものを打撃式削岩機といい,狭義に削岩機というときは,この形式のものを指す。切削によるものは,ビットを先端にとりつけたロッドを回転させるので,回転式削岩機という。そのほか,両者を組み合わせた回転打撃式削岩機が近年普及しつつある。打撃式削岩機はもっぱら圧縮空気で,回転式削岩機は,小型のものは圧縮空気モーターまたは電動機で,大型のものは油圧モーターで駆動される。回転打撃式削岩機は大型のものが多く,もっぱら油圧で駆動される。
削岩機の歴史は,1813年にイギリスのトレビシックR.Trevithickが発明した蒸気動回転式削岩機にさかのぼる。その後,49年にアメリカのクーチJ.J.Couchによって蒸気動打撃式削岩機が発明された。さらに51年にはアメリカのファウルJ.W.Fowleが,ラチェットとポールによる削岩ロッドの回転機構を発明した。この削岩機では,ピストンとロッドとが一体になっていた。その後,アメリカでは,バーリーC.Burleighらが66年にファウルの特許を改良して,圧縮空気で駆動される圧気動削岩機を製作して,トンネル工事に使用して成功した。他方,フランスでは,1861年にソメイエM.Sommeillerが発明した圧気動削岩機が実際に使用された。このようにして,削岩機の実用化が始まったが,70年になると,現在のように削岩ロッドと打撃ピストンとが分離した形式の削岩機が,アメリカのショーC.H.Shawによって発明されて,さく孔能率が著しく向上した。しかし,まだビットで破砕した岩石の破片(繰り粉)を排除する機構はもっていなかったので,繰り粉の排除が,次の問題になった。
この問題を解決したのは,アメリカのライナーJ.G.Leynerであった。彼は1897年,ロッドに中空鋼を使って,圧縮空気を孔底に吹きこんで繰り粉を排除する方式を発明した。しかし,圧縮空気とともに飛散した繰り粉が,坑夫たちに珪肺症をひき起こしたので,まもなく,圧縮空気の代りに水を通して繰り粉を排除する方式に改良した。この形式の削岩機はウォーターライナーと呼ばれ,1902年には日本の足尾鉱山にも輸入されている。日本で削岩機の製造が始まったのは,このライナーの特許が期限切れとなった14年のことであった。30年にはドイツのフロットマン社が,削岩機本体を支持するための圧気ピストン(エアレッグ)を有する小型削岩機(レッグハンマー)を製作した。第2次世界大戦後になると,大型削岩機を何台も搭載して自走するジャンボjumboやクローラードリルが急速に普及した。また,刃先に超硬合金を用いた削岩ビットが使用されるようになった。さらに,ドイツを中心として打撃と同時に切削を行うため,打撃機構のほかに圧気モーターで削岩ロッドを強制的に回転させる機構を備えた回転打撃式削岩機が発明されて,実用化された。
削岩機の動力源としては,1860年代のソメイエやバーリーの削岩機以来,もっぱら圧縮空気が用いられてきたが,1960年代後半に入ると,動力源として油圧のみを使用する回転打撃式削岩機が開発され,日本でも77年には製造されるようになった。
圧力5~7kgf/cm2の圧縮空気で駆動され,直径40~70mm,深さ1~10m程度をさく孔する。打撃数は毎分1500~2500回。さく孔速度は岩石の強度で大きく異なるが,花コウ岩などでは毎分数十cmまでである。大型の水平さく孔用をドリフターdrifter,小型で手持ちの下向きさく孔用をプラッガーpluggerまたはジャックハンマーjack hammer,小型でエアレッグを備えているものをレッグハンマーleg hammer,支持脚が削岩機と一体となっている上向きさく孔用をストーパーstoperと呼ぶ。近年はプラッガーとストーパーはまれにしか使用されない。
機体の後部に設けられた自動バルブによって,圧縮空気の通路を切りかえて,シリンダー中のピストンの前後に交互に圧縮空気を送りこんでピストンを前進・後退させ,ロッドを打撃する。ロッドは多くの場合,中空六角鋼製で,その先端には超硬合金製の削岩ビットをとりつけ,後部は,ドリルチャックで削岩機に接続される。断面が円形の孔を作るためには,削岩ビットを,したがってロッドを各打撃ごとに一定角度回転させることが必要である。そのため,ピストンが後退するとき,その内側にはめこまれたライフルバーの斜めの溝に沿ってピストンが左回りに回転しながら後退する。このピストンの回転は,ピストン前部と溝で組み合わされたローテーションスリーブに伝達され,ドリルチャックを通してロッドを回転させる。一方,ピストンが前進するときは,ライフルバーが後方のラチェットのところで自由に回転するので,ピストンの回転,したがってロッドの回転は起こらない。
さく孔能率を高めるためには,削岩ビット,したがって削岩機を孔底に向かって適当な推力で押しつける必要がある。ドリフターではそのため,削岩機の方向を一定に保ち,一定の推力を与えながら前進させるための架台(ガイドセル)が用いられる。ガイドセルでは,圧気モーターで駆動されるチェーンやねじで削岩機を送り出す。円滑にさく孔を続けるためには,繰り粉を排除しなければならないが,そのために削岩ロッドの中空孔を通して,圧縮空気または水をビットに送る。前者を乾式,後者を湿式という。乾式は粉塵(ふんじん)が発生しやすいので,湿気をきらう特殊な岩盤をさく孔するときなど,まれにしか用いられない。
打撃式削岩機でも削岩ロッドは回転するが,それはピストンが後退するとき,すなわちビットが孔底を打撃しないときである。これに対して,打撃機構とは別に独立した回転機構を設けて,モーターで強制的にロッドを回転させる形式のものを回転打撃式削岩機という。打撃式と比較するとさく孔能率は高いが,機構が複雑になるので大型のものが多い。そのため,ガイドセルにとりつけてジャンボに搭載したり,クローラー式の台車に搭載してクローラードリルcrawler drillとして用いる。かつては圧縮空気を動力源としていたが,その後,回転機構のみ油圧式のものが出現し,最近では,打撃,回転両機構とも油圧で駆動する形式のもの(油圧式削岩機)が普及してきた。油圧式削岩機は,回転速度100~350rpm,打撃数毎分2000~3000回,さく孔径45~80mmである。さく孔速度は,花コウ岩で毎分1m程度である。
クローラーに積んで孔径65~150mm,深さ10~30cmをさく孔する大型のもの(主として石灰石採掘用)もあるが,最も普通に用いられているのは,石炭や泥岩など軟弱な岩石に小孔径の爆破孔をさく孔するオーガーaugerと呼ばれるものである。オーガーは小型で手持ちのものが多く,圧気モーターで駆動されるものと電動機で駆動されるものとがある。削岩ロッドには,菱形断面の帯鋼をねじったものと,丸棒にリボンをらせん形に巻きつけたものとがあり,いずれも回転とともに繰り粉を排除する。回転速度は200~700rpm,さく孔径は35~55mm,さく孔長は最大2m程度である。
執筆者:西松 裕一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…小型ガソリンエンジンや圧縮空気などの原動力をばねを介して打撃板に伝え,打撃と振動によって締固めを行う小型締固め機械をタンパーtamperという。
【岩石工用機械】
削岩機rock drill採石や岩石の除去のために行う爆破作業において,火薬を挿入する穴をあけたり,爆破された岩石を小割りにするため,あるいは基礎工事におけるグラウト注入のための穴をあけるのに用いられる機械。駆動には,圧縮空気,電動機,内燃機関が使用される。…
…小型ガソリンエンジンや圧縮空気などの原動力をばねを介して打撃板に伝え,打撃と振動によって締固めを行う小型締固め機械をタンパーtamperという。
【岩石工用機械】
削岩機rock drill採石や岩石の除去のために行う爆破作業において,火薬を挿入する穴をあけたり,爆破された岩石を小割りにするため,あるいは基礎工事におけるグラウト注入のための穴をあけるのに用いられる機械。駆動には,圧縮空気,電動機,内燃機関が使用される。…
… 18世紀も後半に至って産業革命を迎えるころには,イギリスやフランスをはじめとするヨーロッパの諸国では,内陸に舟運を通すため運河の建設が盛んに行われ,機関車の実用化は世界各地で鉄道建設のブームを巻き起こし,必然的に鉄道用としてのトンネルの需要が急増することとなった。 トンネルの掘削に黒色火薬が用いられ出したのは17世紀の後半になってからであるが,それまでのトンネル施工能率を飛躍的に向上させ,トンネル労働の近代化を実現したのは,A.ノーベルの発明(1866)によるダイナマイトの普及と空気削岩機の実用化であった。これに先立つ1845年に,フランス,イタリア間でアルプスを横断する12.85kmのモン・スニ鉄道トンネルを建設しようという大事業が決意された。…
※「鑿岩機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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