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解放の神学 かいほうのしんがくTheology of Liberation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

解放の神学
かいほうのしんがく
Theology of Liberation

被抑圧,被差別人民の解放をキリスト教の福音の本質として説く現代キリスト教神学の一潮流。従来の欧米のキリスト教神学は,最も革新的なものをも含めて,白人の神学,ブルジョアジーの神学の制約を脱することができないとして,これを批判,拒否し,真に民衆の立場に立って聖書の神を解放する神として新しくとらえ直すことを説き,イエスの福音も必然的に社会的解放を指向するものであるとする。 1960年代以後アメリカの黒人キリスト教徒,中南米カトリック急進派,アフリカ教会などのなかに台頭してきたもので,特に中南米において大きな影響力をもつ。解放思想のイデオロギー化を排し,思想と実践の相互媒介と統一を強調するところにも特色がある。

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百科事典マイペディアの解説

解放の神学【かいほうのしんがく】

ラテン・アメリカで起こったカトリック教会の改革運動。英語ではliberation theology。ラテン・アメリカを起点に,アジア,アフリカを席捲し,バチカン(教皇庁)にも自己変革を迫った第二の宗教改革。
→関連項目ハイチラテン・アメリカ

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世界大百科事典 第2版の解説

かいほうのしんがく【解放の神学 Teología de la Liberación】

貧困や抑圧からの解放によって,全人的発展をめざす神学。解放の神学は,20世紀中葉のラテン・アメリカで誕生した。その背景となるのは,開発政策の破綻によって深刻化した貧困の拡大であり,キューバ革命(1959)が惹起した広汎な革命運動のインパクトであり,さらにはその反革命として起きた権威主義的軍事政権による暴力的政治と激しい人権抑圧の状況である。これまで体制維持的役割を果たしてきたカトリック教会は,このような状況に積極的に対応して,自ら変革の主体に変貌した。

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大辞林 第三版の解説

かいほうのしんがく【解放の神学】

1960年代から70年代にかけ中南米で生まれた新しいカトリシズムの神学。神の存在証明に力点を置いた従来の神学に代わり、神学の基本を貧困や抑圧からの解放に求める。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

解放の神学
かいほうのしんがく
Theology of Liberation

ローマ・カトリック教会は第二バチカン公会議(1962~65年)を経て、基本的人権、社会正義、民主主義を推進する主体に変化したが、ラテンアメリカでは、コロンビアのメデジンで開かれた第2回司教会議(1968年)において、この方針が確認され、植民地以降の保守的な支配秩序を担ってきたカトリック教会は改革勢力に転じた。
 進歩派の司教や信徒らは、人々の解放のために世俗的な制度や秩序のあり方を問題にし、貧者の側にたって大土地所有制など不公平な社会秩序の変革に立ち上がった。農村や都市の貧困区にキリスト教基礎共同体(CEB)を打ち立て、聖書の教えを具体的な日常生活に照らして解釈し、民衆層の意識化を進めることで諸問題を解決しようとした。1970年代に誕生した保守的、抑圧的な軍事政権に対しては、批判勢力としての役割を担い、人権を擁護し民主化を推進した。中央アメリカでは革命運動と連携する急進的な動きに発展した。理論的には、マルクス主義、従属論、構造的暴力論の影響を受け、ペルーのグティエレス神父らによって代表される。
 1980年代になると、階級闘争を是認し、教会組織の軽視にもつながりかねない急進的な立場は、ローマ教会内部から批判され、教会の保守化傾向とともに、解放の神学は全般的に減退していくが、今日でもカトリック教会の社会活動にその影響を残している。[遅野井茂雄]
『グスターヴォ・グティエレス著『岩波現代選書 解放の神学』(1985・岩波書店)』

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