言痛し(読み)コチタシ

デジタル大辞泉 「言痛し」の意味・読み・例文・類語

こちた・し【痛し/痛し】

[形ク] 《「こといたし」の音変化》
人の口がうるさい。煩わしい。
人言ひとごとはまこと―・くなりぬともそこに障らむ我にあらなくに」〈・二八八六〉
ことごとしい。おおげさだ。
殿上人、四位、五位―・くうち連れ、御供にさぶらひて並みゐたり」〈・二七八〉
たくさんである。量が多い。程度がはなはだしい。
「髪うるはしくもとはいと―・くて」〈紫式部日記
[補説]奈良時代では多く人のうわさについていう場合が多いが、平安時代になると、霜の置くさま、毛髪の多いさまなどにいう。

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精選版 日本国語大辞典 「言痛し」の意味・読み・例文・類語

こちた・し【言痛・事痛】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「こといたし(言痛)」の変化した語 )
  2. 人の言葉、うわさなどが多くて、うるさい。くどい。わずらわしい。
    1. [初出の実例]「許智多鶏(コチタケ)ば小泊瀬山の石城にも率て籠らなむな恋ひそ我妹」(出典常陸風土記(717‐724頃)新治歌謡)
  3. 様子や状態がはなはだしい。仰山である。ことごとしい。
    1. [初出の実例]「鶴は、いとこちたきさまなれど、鳴くこゑ雲井まできこゆるいとめでたし」(出典:枕草子(10C終)四一)
  4. 度がすぎるほどに盛んである。立派すぎるほどである。
    1. [初出の実例]「御車十五、御前四位五位がちにて〈略〉こちたき程にはあらず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
  5. 事がわずらわしいほど多いさま。繁雑である。
    1. [初出の実例]「車かきおろして、こちたくとかくする程に」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  6. 量や程度がはなはだしいさま。びっしりしている。たっぷりとある。度をこえて、わずらわしいと思うほどである。
    1. [初出の実例]「はなはだも降らぬ雪ゆゑ言多(こちたく)も天つみ空は曇らひにつつ」(出典:万葉集(8C後)一〇・二三二二)
    2. 「立ち込みたる物見車ども、かち人どもも、こちたきまで多かり」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)四)

言痛しの派生語

こちた‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

言痛しの派生語

こちた‐さ
  1. 〘 名詞 〙

こと‐いた・し【言痛】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙こちたし(言痛)
    1. [初出の実例]「こといたくは待てと思ふを岩代の野辺の下草我れし刈りてば〈よみ人しらず〉」(出典:夫木和歌抄(1310頃)二二)

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