日本大百科全書(ニッポニカ) 「訟務局」の意味・わかりやすい解説
訟務局
しょうむきょく
国が被告となるなど国の利害が関係する訴訟への対応を指揮統率する法務省の組織。国がかかわる行政訴訟や民事訴訟について、統一的、一元的に対応する。
訟務局は1952年(昭和27)の法務省発足とともに誕生し、1952~1968年と1976~2001年(平成13)の間は局であったが、行政改革や省庁再編により、それ以外の期間は法務省大臣官房の一部署などに格下げされていた。しかし、原子力発電所関連訴訟、在日アメリカ軍基地関連訴訟、集団的自衛権の行使を認める安全保障法関連訴訟、C型肝炎訴訟など、国民の暮らしへの影響が大きく、国の政策の根本に関わる訴訟が増える傾向にあり、法務省が重要大型事件と位置づける訴訟は2011年度末の約1500件から2013年度末には約2300件に増えている。こうした訴訟への対応力を強化するため、2015年4月10日に、法務省は大臣官房の訟務部門を訟務局へ格上げした。
検事や裁判官出身の訟務検事や任期付弁護士らが国側代理人となり、国の立場から、裁判所への申立て、主張、立証をする。将来、訴訟につながるリスクを考慮しながら他府省庁と協議し、訴訟を回避するように政策を判断する「予防司法」にも取り組む。2014年に、国際司法裁判所(ICJ)から日本政府が南極海での調査捕鯨中止を言い渡された際には関係省庁の連携が不十分であったとの反省があり、訟務局は従来、外務省任せであった海外で起こされた訴訟にも積極的に関与することになった。全国に約110人いる職員が、国が係争中の裁判など2万件弱の訴訟を担当する。
[編集部 2016年1月19日]