設定保育(読み)せっていほいく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「設定保育」の意味・わかりやすい解説

設定保育
せっていほいく

幼稚園保育所、認定こども園などの保育者(教師、保育士など)が、教育的意図と計画性をもって特定の保育活動のヒントを提示し、興味を示して参加する幼児たちを中心にまとまりのある活動の場を設けること。一斉保育型、自由保育型を問わず双方の教育形態に挿入することが可能である。

 日本の幼稚園、保育所、認定こども園などの集団保育の場で行われている保育は、一般的に、子どもの自発的な活動としての遊びを中心に展開され、保育者は直接的に強い指導性を発揮せず、援助的に関わることがよいとされている(幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型こども園教育・保育要領などの国のガイドライン参照)。子どもの自由遊びの時間が比較的長い保育形態を自由保育型、逆に、教師の意図的計画的な指導性のもとでクラス単位ほどの大規模の子ども集団が、同時に同一の課題に取り組む時間が相対的に長い保育形態を一斉保育型とよぶことが一般的であるが、明確な区分があるわけではない。

 設定保育において保育者は、日々の保育の流れや幼児たちの発達課題などをかんがみて、特定の活動を計画し、場を設定したり、発展的な素材を提供したりする。たとえば、春先に季節感や食育の体験を目的に、自分たちで収穫した野菜を使ったスープづくりの場を準備したり、共同性や探究心を誘う活動として、小麦粉粘土を作り、こねたりつないだりする場を設けるなど。保育室内や園庭の一角などにそのような場を設定し、好奇心や興味をもって集まってきた子どもたちが(異年齢が混ざる混合保育になることもある)共同して活動することを促す。

 ままごとコーナー、絵本コーナーなどを設ける「コーナー保育」も設定保育に近いが、比較的大規模で簡単に移動しにくい装置が必要となるため、設定保育よりも長期にわたり継続して提供される。それに比べて設定保育は、継続時間・方法・展開の方向性などを、保育者が状況に合わせて日々調整しやすい。

 子どもたちの日ごろの自発的な遊びや、ひとりひとりの興味や関心、作業能力の到達度、発達上の課題などを総合的にかんがみ、保育者は設定保育に向けて導入的な働きかけ(準備作業、声かけ)を行い、子ども同士の共同的な関係性を生かしつつ、個々の子どもの遊びや活動の幅を広げる契機とするのである。

[浜口順子 2018年4月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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