日本大百科全書(ニッポニカ) 「自由保育」の意味・わかりやすい解説
自由保育
じゆうほいく
幼稚園、保育所、認定こども園などにおける集団的な幼児教育の形態の一つ。子どもひとりひとりの自発的な遊びや活動を重視することが特徴。自由保育を中心に運営されている園の教育形態を自由保育型とよぶことがある。その一方で、保育者(教師、保育士など)の強い指導性のもとに、クラスなどの大きな集団単位で共通の課題や活動に取り組む時間が比較的長い園の教育形態は一斉保育型とよばれることもある。この区別は相対的なもので、明確な基準があるわけではない。
日本では、現在、幼稚園、保育所、認定こども園などにおいて集団的な幼児教育が行われているが、日本の就学前教育は、第二次世界大戦前から、学童期以降の学校教育とは一線を画し、幼児期の子どもに対しては、その主体性を尊重し、自発的に子どもが始める活動や遊びを認めて教育活動を行う傾向が伝統的に強い。第二次世界大戦後も、幼稚園教育要領や保育所保育指針などの、国が示す保育・教育に関するガイドラインにおいて、保育者による直接的な指導ではなく、子どもの主体的な活動を促し、幼児の自発的な活動としての遊びを通してひとりひとりの特性に応じ、発達の課題に即した指導を行うこととされている。そこには、子どもの自由意思による活動を経験として生かし、保育者はその経験の意味を理解しながらひとりひとりの子どもに即した援助をするべきであるという基本的な教育観がある。
こうした教育観を実現するには自由保育型が適している、と考えられる風潮があるが、単純にそういいきれるものではない。園によって実際の教育内容は多様であり、実施する保育者の資質にも大きく左右されるからである。朝の登園から降園まで自由遊びが中心で、子どもたち全員が保育室に集合するのは昼食時間と降園時の集まり時間だけ、という自由保育型園もある。一方、午前か午後の保育時間の一部に一斉保育的活動を取り入れる、混合的な自由保育型園もありうる。運動会、遠足などの行事はおのずと一斉的になりやすいが、これは自由保育型の園においても例外ではない。
一般的に、保育者の指導性や計画性とは無関係な放任主義的な保育と、自由保育とが混同される向きがないわけではないが、放任保育が一つの教育形態たりえないことはいうまでもなく、教育形態としての自由保育とは別のものである。
[浜口順子 2018年4月18日]