卵管不妊に対する治療法として,体外受精をヒトの臨床に応用し,その結果生まれた赤ん坊をさす。ガラス容器内で受精,培養を行うために試験管ベビーと呼ばれる。方法としては,麻酔下で腹腔鏡を用いて卵巣から排卵直前の卵を採取し,この卵とすでに採取して前培養を施した精子とを体外で受精させ,約48時間培養後,ホルモン処置を施した被実施女性の子宮腔内へ受精卵を戻し,妊娠,分娩に至らしめるという,いわば卵管バイパス法である。本法が開発されてから,通気,通水,手術療法(卵管開口術,卵管吻合(ふんごう)術など)によっても治療困難であった女性についても,子どもをもうけたいという望みをかなえることが可能になった。1978年イギリスのR.エドワーズとP.ステプトーにより試験管ベビー第1号が誕生して以来,オーストラリア,アメリカ,西ドイツなどで成功例が報告されているが,成功率はまだ数%で満足すべきものではない。日本でも83年,第1号の誕生をみた。
→体外受精
執筆者:飯塚 理八+中野 真佐男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…イギリスのケンブリッジ大学生理学教室で,人間の体外受精の研究を続け,P.C.ステプトーの協力を得て,1978年7月世界最初のいわゆる“試験管ベビー”を出産させた。家畜での体外受精はすでに広く行われ,人間でも1969年ころから研究が始まっていたが,この成功をきっかけに,世界で広く試みられるようになった。…
…バーミンガム北東の都市オールダムの人間生殖センター所長をつとめた。R.G.エドワーズに協力して,1978年最初の“試験管ベビー”を出産させた。ガラス器内で卵と精子を混ぜ,ある時間経過を観察してから母体に戻す方法であるが,戻さない受精卵をそのまま捨てることが〈人工中絶〉と言えるとの議論がある。…
…死胎についても,その処遇は親,もしくは第三者の決定にゆだねられており,胎児の〈人〉権が侵害される状況も指摘されている。近年,生命科学の進歩により,試験管ベビーが誕生しているが,受精時から胎児とみるべきか母体内に戻されたときから胎児として扱われるのか,あるいは着床時からとするのかなど,法的保護の観点から議論が残されている。出生【南方 暁】。…
※「試験管ベビー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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