日本大百科全書(ニッポニカ) 「誘電体バリア放電」の意味・わかりやすい解説
誘電体バリア放電
ゆうでんたいばりあほうでん
気体中の放電の一形式。絶縁体である誘電体を介して気体に交流電圧を印加(加えること)し、気体中に放電をおこしてオゾンを発生させたり、紫外線を発生させたりするタイプの放電。最初の使用目的によりオゾナイザ放電とよばれたが、用途が広くなったため誘電体バリア放電、あるいは単にバリア放電とよばれることが多い。放電機構的には火花放電に類似しているにもかかわらず音を発しないため、無声放電ともいわれる。電極間の電圧を放電開始電圧以上にすると放電が始まるが、絶縁体上に一定の電荷がたまると放電が止まる。しかし電極間に逆の電圧がかかると、絶縁体上にたまった電荷が放出される放電がおきる。
酸素中または空気中で放電させるとオゾンが発生するためオゾナイザ(オゾン発生器)になる。キセノンガス中で放電させるとキセノンが波長157ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)や173ナノメートル付近の紫外線を発し、この紫外線を蛍光体で可視光に変換すると温度変化による光出力が少ない長寿命の蛍光ランプになる。そのため、複写機やファクシミリの読み取り用の光源として使われていたが、これらの応用はLED(発光ダイオード)ランプに置き換えられた。プラズマディスプレー(現在は生産されていない)は多数の微小な空間でキセノンガス中の放電をおこさせ、キセノンが発する紫外線を蛍光体で赤、緑、青などの光に変換している。また種々のガス中で放電させることにより分子の分解や合成などの化学反応をおこさせることもできる。
[東 忠利 2024年6月18日]