蛍光を発する物質の総称。物質は光を受けると状態のいかんによらず蛍光を出すが、とくに可視光を発する物質を蛍光体という。
蛍光体には純物質と、賦活剤または活性化剤を少量加えた不純物とがある。純物質蛍光体の例は、無機物のサマリウム、テルビウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの希土類金属の塩酸塩や硫酸塩、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウムなどの遷移金属酸塩がある。また有機物としては、ベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素、エオシン、フルオレセインなどのフタレイン系色素がある。不純物として添加する賦活剤には、銅、銀、金、タリウム、鉛、アンチモンなどの重金属、クロム、マンガンなどの遷移金属、希土類金属、共役二重結合をもつ有機化合物がある。
蛍光体はブラウン管や蛍光染料など日用品に使用されるほか、紫外線、X線、電子線の検出や強度測定など、研究面にも利用される。
蛍光放電管は、放電管内に発生した紫外線エネルギーを管壁に塗布した蛍光体に吸収させ、蛍光体から放出する蛍光を光源としたものである。励起光には水銀の2537Å光が用いられ、蛍光体をかえて種々の色調を得る。たとえば、タングステン酸カルシウムを用いれば青色、ケイ酸亜鉛では緑色、ケイ酸カドミウムを用いれば橙(だいだい)色となる。ネオンサイン、誘ガ灯、集魚灯などがある。一般に用いられている蛍光灯は、アンチモンやマンガンで賦活したハロリン酸カルシウムが用いられており、アンチモンでは青色蛍光、マンガンでは赤色の蛍光が得られ、両者を混合して種々の色調が得られる。
テレビのブラウン管の内壁には種々の蛍光体が塗布されており、電子によって励起された蛍光体から蛍光が発せられている。
[下沢 隆]
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蛍光りん光体(phosphor),りん光体ともいう.蛍光を発する物質.放射線検出用のものは,とくにシンチレーターとよぶ.無機物質では純粋な結晶(ウラニル塩,CaWO4など)と発光中心形成のため不純物を添加した,いわゆる付活型結晶(NaI-Tl,ZnS-Ag,ルビーなど)がある.有機物ではπ電子系の結晶(アントラセン,スチルベンなど)と分散系(アントラセン,テルフェニルなどを溶媒やプラスチックに分散されたもの)がある.応用面では,蛍光灯,ブラウン管,X線増感紙,シンチレーション・カウンター,蛍光増白剤,蛍光塗料,夜光塗料,暗視器,レーザー装置,オプトエレクトロニクス装置などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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