改訂新版 世界大百科事典 「赤線青線」の意味・わかりやすい解説
赤線・青線 (あかせんあおせん)
太平洋戦争敗戦後の進駐軍の指示による行政区分。地図上に赤線あるいは青線をもって区分のかこみをつけたことから生じた名称。赤線とは特殊飲食店と称された,売春婦を置いて売春をさせる店が集まっていた地域である。太平洋戦争中までは,明治以来,許可された売春婦すなわち公娼を置いて売春をさせる店を一区域内に集めて遊郭といった。黙認されている私娼を集めて売春させる店は明治中期から銘酒屋と称して集落を作らされた。遊郭の建物は大きかったが,銘酒屋は3部屋ぐらいの小住宅の形式であった。遊郭,銘酒屋いずれも管理売春であって,娼婦は前借によって自由を束縛された売られてきた女性だった。アメリカには形式上は管理売春はないことになっており,アメリカ軍が中心になっていた占領軍は日本の売春の形態をアメリカ風に強権をもって変えさせた。売春婦は特殊飲食店の部屋を借りて住んでいて,そこへ遊びにきた客と恋愛におちいり,プレゼントを受けとるという形式になった。遊郭,銘酒屋街の区別なく1946年12月から赤線区域になった。青線とは飲食店街をふくむ盛り場の区分だが,キャバレー,バーなどでもホステスの即席恋愛がおこなわれることもあった。58年に売春防止法が施行されて全国で4万に近い特殊飲食店と12万人ほどの従業婦がなくなり,赤線廃止とともに青線の名称も消えた。
執筆者:加太 こうじ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報