赴く(読み)オモムク

デジタル大辞泉 「赴く」の意味・読み・例文・類語

おも‐む・く【赴く/趣く】

《「向く」に対して「おも向く」の意》
[動カ五(四)]
ある場所・方角に向かって行く。「現場に―・く」
物事がある方向・状態に向かう。「心の―・くままに行動する」「病気が快方に―・く」
従う。同意する。
「なでふ事のたばかりをしてか、女の―・くべき」〈宇津保藤原の君〉
[可能]おもむける
[動カ下二]
向かわせる。行かせる。
をかの上より南のそひを下りざまに―・けたり」〈今昔・二五・五〉
うまくことが運ぶようにする。
「わが大事ひじりの君、このこと―・けしめ給へ」〈宇津保・藤原の君〉
従わせる。同意させる。
「恥づかしげなる御気色けしきなれば、強ひてもえ聞こえ―・け給はず」〈・少女〉
そのような方向・趣旨で考える。
「人にあまねく知らせじと―・け給へるけしき」〈藤袴
[類語]行く出向くたどる向かう

おも‐ぶ・く【赴く/趣く】

[動カ四]おもむく」に同じ。
「薬をもてすみやかに―・かしむ」〈大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点〉
[動カ下二]おもむく」に同じ。
おほむたからを導くもとは、教へ―・くるに在り」〈崇神紀〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「赴く」の意味・読み・例文・類語

おも‐ぶ・く【赴・趣】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙
    1. その方に向く。
      1. [初出の実例]「茅草の上に頭を東に面(オモフイテ)臥す」(出典:蘇悉地羯羅経寛弘五年点(1008)下)
    2. その方に向かって行く。
      1. [初出の実例]「唯し種種の投げ火に赴(オモフキ)自ら餓(いひにうゑ)たるが等き行を修するのみ」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)五)
    3. その方に心が向く。
      1. [初出の実例]「若し我等を請して漫荼羅に赴(オモフカシメ)む者虔誠の心を以て法の如く供養せは」(出典:蘇悉地羯羅経寛弘五年点(1008)中)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
    1. 従わせる。同意させる。
      1. [初出の実例]「教へ賜ひ、於毛夫気(オモブケ)賜ひ、答へ賜ひ、宣り賜ふまにまに〈略〉天の下の政を行ひ賜ひ」(出典:続日本紀‐天平元年(729)八月五日・宣命(蓬左文庫本))
    2. しむける。勧める。教化する。
      1. [初出の実例]「父がかくしまにあれと念ひて於母夫(オモブケ)教へけむ事、過たず失はず」(出典:続日本紀‐天平勝宝元年(749)四月一日・宣命)
    3. 特定の立場によって、物事を解釈する。…とみなす。
      1. [初出の実例]「年頃かくてはぐくみきこえ給ひける御心ざしを、ひがざまにこそ人は申すなれ。かのおとども、さやうになむおもぶけて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)藤袴)

赴くの補助注記

同義の「おもむく」に比して、訓読語、男性語としての傾向が強い、とする説がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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