向かう(読み)ムカウ

デジタル大辞泉 「向かう」の意味・読み・例文・類語

むか・う〔むかふ〕【向かう】

[動ワ五(ハ四)]
ある物・方向正面に見るように位置する。顔やからだをその方向に向ける。「鏡に―・って化粧する」「舞台に―・って右側を上手という」
相手とする。「親に―・って生意気な口をきく」
ある方向をさして動いていく。
㋐目的地を目差して進む。「会場へ―・う」「頂上に―・って歩き出す」
㋑状態・時間がそれに近づく。「快方に―・う」「冬に―・う」「争議解決の方向に―・う」
はむかう。対抗する。「敢然として敵に―・う」
相当する。匹敵する。
ただに逢ひて見てばのみこそたまきはる命に―・ふが恋やまめ」〈・六七八〉
[可能]むかえる
[動ハ下二]向かうようにする。
母屋もや御座に―・へて大臣おとどの御座あり」〈・若菜上〉
[類語]1向く向き合う向かい合う対するあい対する正対せいたいする面する臨む直面する対峙たいじする/(3赴く行く進む目差す向ける/(4立ち向かういどかかるぶつかる対する対抗する突っかかる対決競争敵対相手取る向こうに回す向こうを張る競う比べる競合角逐かくちく勝負り合い競技プレー争う張り合うせめぎ合う渡り合う遣り合う先を争うしのぎを削る火花を散らす

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「向かう」の意味・読み・例文・類語

むか・うむかふ【向・対】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( 「むきあう(向合)」の変化した語 )
    1. 他の正面に対して自分の正面を向ける。相対する。
      1. [初出の実例]「尾張に 直に牟迦幣(ムカヘ)る 尾津の崎なる 一つ松 あせを」(出典古事記(712)中・歌謡)
      2. 「あした旅立に、我々にむかひて、行衛しらぬ旅のうさ、〈略〉と泪を落す」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)市振)
      3. 「竹代も今夜ばかりは机に対(ムカ)うことを止めて」(出典:はやり唄(1902)〈小杉天外〉四)
    2. 互いに相手を前にする。対座する。
      1. [初出の実例]「吾が見し子に うたたけだに 牟迦比(ムカヒ)をるかも い副ひをるかも」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「入道ふしめになて、〈略〉あのすがたに腹巻をきて向はん事、おもばゆうはづかしうや思はれけん」(出典:平家物語(13C前)二)
    3. その方向に面を向けて進む。おもむく。出むく。
      1. [初出の実例]「日の本のちちははにむかふべきたよりをあたへむ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 「都合其勢一千人、手々にたい松もって如意が峯へぞむかひける」(出典:平家物語(13C前)四)
    4. 時が近づく。その時になろうとする。また、時が移ってその状態になろうとする。
      1. [初出の実例]「また秋のうれへの色にむかふなり尾花が風に庭の月影〈従三位親子〉」(出典:玉葉和歌集(1312)秋上・五三五)
      2. 「ハルニ mucǒ(ムカウ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    5. 二つのものが肩をならべる。相当する。匹敵する。
      1. [初出の実例]「直に逢ひて見てばのみこそたまきはる命に向(むかふ)吾が恋止まめ」(出典:万葉集(8C後)四・六七八)
      2. 「一人が千人にむかふ者をおかんとゆふ」(出典:天正本狂言・今参(室町末‐近世初))
    6. はむかう。逆らう。はりあう。対峙する。
      1. [初出の実例]「与敵 下牟可布 音着」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
      2. 「テキニ mucǒ(ムカウ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 向かわせる。向かうようにする。
    1. [初出の実例]「悲び哭きつつ逆(ムカヘ)(すす)み来る」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇)
    2. 「クゲ ブケ トモニ ヲモテヲ mucaye(ムカエ) カタヲ ナラブル ヒトモ ゴザナカッタ」(出典:天草本平家(1592)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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