背く(読み)ソムク

デジタル大辞泉 「背く」の意味・読み・例文・類語

そ‐む・く【背く/×叛く】

《「向く」の意》
[動カ五(四)]

㋐取り決めたことや目上の人の考え・命令などに従わずに反抗したり反対したりする。さからう。「約束に―・く」「親の言いつけに―・く」
㋑謀反する。はむかう。「主君に―・く」
世間や、ある人のもとから離れて行く。去る。離反する。「世を―・く(=出家する)」「妻にまで―・かれる」
予想されることと反対の結果になる。「四番打者の名に―・かぬ大活躍」「ファンの期待に―・く」
その方向に背中を向ける。
「結び灯台のうす暗いに―・いて」〈芥川偸盗
[可能]そむける
[動カ下二]そむける」の文語形
[用法]そむく・さからう――「親に背く(逆らう)」「主人の意に逆らう(背く)」などの場合、目上の人の言うことを聞かないの意では相通じて用いられる。◇「そむく」は、反抗の意思言葉よりも行動で表す方に重点がある。「期待にそむく」「約束にそむく」「…の名にそむく」などの使い方は、「さからう」にはない。◇「さからう」は、反抗の意思を言葉や行動で表すことで、「上司にさからって左遷される」は、従わないことから口答えまでを背景に含んでいる。◇「川の流れにさからって泳ぐ」の使い方は「そむく」にはない。◇類似の語「たてつく」は、よりはっきりと反対の意思を言葉と行動に表すことで、特定対象にしぼられる。「権力教師)にたてつく」
[類語]反する裏切る内応する内通する気脈を通じる背信背徳背任する変心する寝返る密告するおためごかし

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「背く」の意味・読み・例文・類語

そ‐む・く【背・叛】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙 ( 「背(そ)向く」の意 ) ある方向に背を向ける。⇔おもむく
    1. 後ろ向きになる。背中を向ける。反対方向やわきを向く。
      1. [初出の実例]「かへるさのみゆき物憂く思ほえてそむきてとまるかくや姫ゆゑ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 人や物から離れる。別れる。去る。
      1. [初出の実例]「朝宮を 忘れ給ふや 夕宮を 背(そむき)たまふや」(出典万葉集(8C後)二・一九六)
    3. ( 世をそむくの意で ) 俗世間を離れる。出家する。隠遁する。
      1. [初出の実例]「そむくとて雲にはのらぬ物なれど世のうきことぞよそになるてふ」(出典:伊勢物語(10C前)一〇二)
    4. 人の思いや意見・命令などに反する。また、期待に反する結果となる。また、道理・常識などに合致しない。さからう。反対する。
      1. [初出の実例]「にほ鳥の 二人並び居(ゐ) 語らひし 心曾牟企(ソムキ)て 家離(ざか)りいます」(出典:万葉集(8C後)五・七九四)
      2. 「すでにこの京を他国へうつさんとせさせ給ひしを、大臣公卿、諸国の人民そむき申ししかば」(出典:平家物語(13C前)五)
    5. 味方であった者、主人などに敵対する。手むかいする。謀叛(むほん)する。
      1. [初出の実例]「皇后〈略〉曲(つばびらか)に兄王(このかみのおほきみ)の反状(ソムクコト)を申したまふ」(出典:日本書紀(720)垂仁五年一〇月)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙そむける(背)

そ‐ぶ・く【背】

  1. 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 「そむく(背)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「おほせをいかで、そふくべきと申ければ」(出典:御伽草子・岩屋(室町末))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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