共役(読み)キョウヤク(その他表記)conjugate

翻訳|conjugate

デジタル大辞泉 「共役」の意味・読み・例文・類語

きょう‐やく【共役/共×軛】

数学で、二つの角・線・点・図形・数などが互いに対称的あるいは相補的関係にあり、入れ換えてもその関係に変化のないこと。
環状構造をもつ不飽和化合物において二重結合が交互に存在すること。

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精選版 日本国語大辞典 「共役」の意味・読み・例文・類語

きょう‐やく【共役・共軛】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 二つの点、線、図形、数などが、ある種の、対称的ないしは相補的な関係にあることの称。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
  3. 二つの複素数がそれぞれ a+bi, a-bi なる形に書かれるという関係にあることの称。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共役」の意味・わかりやすい解説

共役
きょうやく
conjugate

共軛とも書く。対になっていること,あるいは対になって結合することをいうが,数学では,それぞれの場合に特別の意味をもって使用される。(1) 共役直径 c.diameters 楕円あるいは双曲線の,一つの直径に平行な弦の中点軌跡はまた,これらの楕円あるいは双曲線の,他の直径となる。この二つの直径は共役であるといい,一方を他方の共役直径,あるいは単に共役径という。(2) 共役軸 c.axis 双曲線 x2/a2y2/b2=1 において,y 軸はこの曲線と交わらない。このように双曲線の二つの対称軸のうち,曲線と交わらない軸を共役軸という。(3) 共役双曲線 c.hyperbola 二つの双曲線 x2/a2y2/b2=1 と x2/a2y2/b2=-1 とは,互いに共役な双曲線であるという。これらの漸近線は一致する。(4) 共役な極 c.poles 二次曲線(または二次曲面)には,点 Pの極線(または極平面)が点 P'を通れば,P'の極線(または平面)も Pを通るという性質がある(→極線と極点)。このような関係にある 2点 P,P'はこの二次曲線(または二次曲面)に関して共役であるという。(5) 共役な極線(極平面) c.polars 二次曲線(または二次曲面)には,直線(平面)p の極 Pが p'の上にあれば,p'の極 P'も p の上にあるという性質がある。このような関係にある 2直線(平面)pp'は,この二次曲線(二次曲面)に関して共役であるという。(6) 共役複素数 zxyixy実数)に対して,複素数 xyi を共役複素数という。幾何学的には,ガウス平面上で,z とは x軸に関して,対称である。z となる数は実数だけである。(7) 共役四元数 c.quateernion 二つの四元数 qx0x1ix2jx3kx0x1ix2jx3kijk虚数)は,互いに共役であるという。(8) 共役根 c.roots 実係数の方程式が虚根 abiab は実数,b≠0)をもてば,必ずその共役複素数 abi もこの方程式のとなる。このように互いに共役複素数となっているような 2根を共役根という。(9) 共役部分群 c.subgroup  G の部分群を H とし,aG の任意の元とするとき,集合 a-1Ha={a-1hahH}を考えれば,a-1Ha もまた G の部分群である。これを H の共役部分群という。G の任意の元 a に対して,a-1HaH が成り立てば,HG正規部分群,あるいは不変部分群といわれる(a-1a の逆元)。(10) 共役体 c.fields  K の二つの拡大体を K1K2 とするとき,K1K2 の上へ写像する対応σが存在し,K の任意の元αに対して,σ(α)=αが成り立てば,K2K に関する K1 の共役体という。(11) 共役元 c.elements 体 K の拡大体 K'の 2元α1,α2が,ともに K に関する代数的元であって,K における同一の既約多項式 fx)の根となっているとき,このα1,α2K に関する共役元という。

共役
きょうやく
conjugation

有機化合物で,2個以上の多重結合,すなわち二重結合や三重結合が1個の単結合をはさんで存在し,これらの結合が相互作用を示すこと。この相互作用は電子の非局在化に基づくもので,不飽和結合にはさまれた単結合はある程度不飽和結合の性質を示す。たとえばブタジエン CH2=CH-CH=CH2 における原子間距離はC=Cで 1.37Å,C-Cで 1.47Åであり,前者エチレンのC=Cの 1.34Åより長く,後者はエタンのC-Cの 1.54Åより短い。これは共役による相互作用の結果であり,不飽和結合に関与するπ電子の広がりがあると考えると説明がつく。共役はその物質の光の吸収のような物理的性質にも,付加反応性のような化学的性質にも影響を及ぼす。 (→共役二重結合 )

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世界大百科事典(旧版)内の共役の言及

【双曲線】より

…定数を2aとし,線分FF′の長さを2cとするとき,ec/a(>1)を離心率という。直線FF′を横軸,線分FF′の垂直2等分線を共役軸といい,これらを合わせて主軸という。また,線分FF′の中点を中心という。…

※「共役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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