化合物の中の二つの原子が3個の共有結合で結ばれているとき,この結合を三重結合という。構造式では3本の線で表して,とくに二つの炭素原子間の三重結合-C≡C-をアセチレン結合という。この3個の共有結合は同等ではなく,1個のσ結合と,2個のπ結合からなる。π結合のため反応性が強く,不飽和性を示し,付加反応が起こり,酸化などの反応により三重結合のところで分子は切断されやすい。炭素原子の最外殻の電子配置は(2s)2(2px)(2py)であるが,(2s)2の電子対が解けて電子1個が空いている2pz軌道に昇位して(2s)(2px)(2py)(2pz)となり,さらに2s軌道と2px軌道がsp混成して,結合軸方向(x軸)で向きが180度異なる二つの混成軌道をつくる。これらの軌道は,これと垂直な方向を向いた2py,2pz軌道とともに4個の価電子を1個ずつ収め,σ電子2個とπ電子2個ができる。CとCとの間の結合距離は,エタンH3C-CH3の単結合は1.54Å,エチレンH2C=CH2の二重結合は1.34Åであるのに対し,アセチレンHC≡CHの三重結合では1.20Åと短くなっている。シアン化水素H-C≡Nの三重結合の結合距離は1.16Åである。
執筆者:佐野 瑞香
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共有結合の一様式。窒素分子の中の二つの窒素原子間の結合や、アセチレン(アルキンの一つ)H-C≡C-Hの炭素間の結合が代表例。この二つの炭素原子間の三重結合をアセチレン結合という。
窒素原子の最外殻電子は(2px)1(2py)1(2pz)1の配置をもつが、二つの窒素原子は、それぞれpx、py、pzどうしが共有結合をつくるので、三つの結合が窒素原子核の間にできることになる。結合軸をz軸にとると、pzどうしの重なりからσ(シグマ)結合ができ、pyどうしとpzどうしからはπ(パイ)結合ができる。したがって、三つの結合はσ結合一つとπ結合二つからできていることになる。アセチレンの場合は、炭素原子のsp混成軌道からσ結合ができ、他の二つの結合は、炭素原子のpx、py軌道の重なりによるπ結合である。一般に三重結合の原子間距離は二重結合のそれより短く、また、炭素化合物における三重結合の反応性は高く、不安定である。
[下沢 隆]
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2原子が互いに三価の原子価によって結合している化学結合.アセチレン炭素原子間の結合C≡Cや,シアン化物イオンの炭素と窒素原子間の結合C≡Nなどがその例であり,結合はσ結合一つとπ結合二つからなっている.アセチレンの三重結合を図解すれば,
のように書くことができる.エタン(一重結合),エテン(二重結合),アセチレンの順に結合は強くなり,結合エネルギーはこの順に,348,607,828 kJ mol-1 と大きくなるが,三重結合は二重結合よりも不飽和性が大きいので,反応性も一般に大きくなる.
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