三重結合(読み)サンジュウケツゴウ(英語表記)triple bond

デジタル大辞泉 「三重結合」の意味・読み・例文・類語

さんじゅう‐けつごう〔サンヂユウケツガフ〕【三重結合】

原子間の結合三つ共有結合からなるもの。-C≡C-(アセチレン結合)、-C≡N(シアン結合)など。

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精選版 日本国語大辞典 「三重結合」の意味・読み・例文・類語

さんじゅう‐けつごうサンヂュウケツガフ【三重結合】

  1. 〘 名詞 〙 化学結合一つ。隣接する原子が三本の共有結合で結ばれたもの。構造式では三本線(≡)ないし三点(…)で表わす。

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改訂新版 世界大百科事典 「三重結合」の意味・わかりやすい解説

三重結合 (さんじゅうけつごう)
triple bond

化合物の中の二つの原子が3個の共有結合で結ばれているとき,この結合を三重結合という。構造式では3本の線で表して,とくに二つの炭素原子間の三重結合-C≡C-をアセチレン結合という。この3個の共有結合は同等ではなく,1個のσ結合と,2個のπ結合からなる。π結合のため反応性が強く,不飽和性を示し,付加反応が起こり,酸化などの反応により三重結合のところで分子は切断されやすい。炭素原子の最外殻の電子配置は(2s)2(2px)(2py)であるが,(2s)2電子対が解けて電子1個が空いている2pz軌道に昇位して(2s)(2px)(2py)(2pz)となり,さらに2s軌道と2px軌道がsp混成して,結合軸方向(x軸)で向きが180度異なる二つの混成軌道をつくる。これらの軌道は,これと垂直な方向を向いた2py,2pz軌道とともに4個の価電子を1個ずつ収め,σ電子2個とπ電子2個ができる。CとCとの間の結合距離は,エタンH3C-CH3単結合は1.54Å,エチレンH2C=CH2二重結合は1.34Åであるのに対し,アセチレンHC≡CHの三重結合では1.20Åと短くなっている。シアン化水素H-C≡Nの三重結合の結合距離は1.16Åである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三重結合」の意味・わかりやすい解説

三重結合
さんじゅうけつごう
triple bond

共有結合の一様式。窒素分子の中の二つの窒素原子間の結合や、アセチレン(アルキンの一つ)H-C≡C-Hの炭素間の結合が代表例。この二つの炭素原子間の三重結合をアセチレン結合という。

 窒素原子の最外殻電子は(2px)1(2py)1(2pz)1の配置をもつが、二つの窒素原子は、それぞれpx、py、pzどうしが共有結合をつくるので、三つの結合が窒素原子核の間にできることになる。結合軸をz軸にとると、pzどうしの重なりからσ(シグマ)結合ができ、pyどうしとpzどうしからはπ(パイ)結合ができる。したがって、三つの結合はσ結合一つとπ結合二つからできていることになる。アセチレンの場合は、炭素原子のsp混成軌道からσ結合ができ、他の二つの結合は、炭素原子のpx、py軌道の重なりによるπ結合である。一般に三重結合の原子間距離は二重結合のそれより短く、また、炭素化合物における三重結合の反応性は高く、不安定である。

[下沢 隆]


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百科事典マイペディア 「三重結合」の意味・わかりやすい解説

三重結合【さんじゅうけつごう】

二つの原子間の共有結合で,三つの電子対によって結合しているものをいう。構造式では−C≡C,−C≡Nなどのように3本の線で表すことが多い。炭素どうしの三重結合をアセチレン結合という。三重結合における三つの結合は互いに等価なものではなく,一つは単結合の場合と同じσ結合,他の二つはこれに比べて電子の局在性が少ないπ結合で,全体として二重結合の場合よりもさらに結合距離が短くなっている。またこの二つのπ結合のため,三重結合位では付加反応が起こりやすい。
→関連項目化学結合不飽和化合物飽和化合物

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化学辞典 第2版 「三重結合」の解説

三重結合
サンジュウケツゴウ
triple bond

2原子が互いに三価の原子価によって結合している化学結合.アセチレン炭素原子間の結合C≡Cや,シアン化物イオンの炭素と窒素原子間の結合C≡Nなどがその例であり,結合はσ結合一つとπ結合二つからなっている.アセチレンの三重結合を図解すれば,

のように書くことができる.エタン(一重結合),エテン(二重結合),アセチレンの順に結合は強くなり,結合エネルギーはこの順に,348,607,828 kJ mol-1 と大きくなるが,三重結合は二重結合よりも不飽和性が大きいので,反応性も一般に大きくなる.

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