株式、外国為替(かわせ)、債券、商品市場で、1秒間に数千回以上の売買注文を繰り返す取引。人工知能(AI)が組み込まれたコンピュータで相場変動の兆候を察知し、価格、数量、タイミングを決め、小幅利益を積み上げる。高頻度取引ともよばれ、英語の頭文字をとってHFTと略称する。取引の通信時間のロスを極力なくすため取引所と同一建物内のサーバーで処理するコロケーションサービスを利用するという特徴をもつ。
超高速取引は市場に流動性を供給するとともに、裁定取引を迅速処理することで適正な市場価格形成に役だつという利点をもつ。欧米では、取引手数料を収益源とする取引所が超高速取引に対応したシステムを相次いで導入し、1990年以降、ヘッジファンドや機関投資家を中心に普及した。日本でも東京証券取引所が2010年(平成22)、大阪取引所は2016年に対応システムを導入して利用が広がった。超高速取引の注文件数は世界の主要取引所の過半を占めるとされる。一方、2010年5月にアメリカの株価が瞬間的に暴落した「フラッシュ・クラッシュ」の要因が超高速取引であったとされるように、超高速取引は相場の乱高下の一因となり、公正な価格形成を阻害しているとの批判がある。このためアメリカでは2010年に証券取引委員会(SEC)を中心に超高速取引業者を登録し、売買動向を追跡できるようにした。ヨーロッパ連合(EU)も2018年から登録制を導入し、取引履歴の作成・保存を義務づけた。日本の金融庁も2017年、改正金融商品取引法に基づき、登録制の導入、取引記録の作成・保存の義務づけ、無登録業者の取次ぎと証券会社の代理売買の禁止を決めた(2018年施行)。違反した登録事業者(個人)は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその双方を科され、無登録など悪質法人は最大3億円の罰金が別途科される。
[矢野 武 2019年9月17日]
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