翻訳|arbitrage
同一商品について、一時的な価格差(金利差)が生じた際に、割安(低金利)なほうを買い、割高(高金利)なほうを売って利益を獲得する商行為。たとえば、原油のように中東には豊富に存在して安いが、日本ではほとんど存在しないため高価な商品がある。農作物のように収穫期には安いが、それ以外の時期には不足して高値となる商品もある。経済成長を遂げている国の株式のように時間の経過とともに上昇が期待される金融商品もある。このような同一商品で生じる時間的、地理的な価格差(金利差)などを利用するのが裁定取引である。「鞘(さや)取り」「アービトラージ取引」とよばれることもある。商品のほか、株式、外国為替(かわせ)、金利、債券などで行われ、現物商品と先物商品の間のほか、期間の異なる先物商品の間や、異なる先物商品の間などでも行われる。日本の株式市場では、日経平均と日経平均先物、東証株価指数(TOPIX(トピックス))とTOPIX先物の間の裁定取引が代表的である。
裁定取引が行われると、理論的には価格(金利)の低い市場では需要が増えて価格が上がり、価格の高い市場では需要が減って価格が下がり、しだいに価格差(金利差)は収斂(しゅうれん)していく。これを一物一価(いちぶついっか)の法則とよぶ。裁定取引には地理的・時間的に離れた市場などを接続し、資源を効率的に配分する機能がある。
通常、裁定取引によって価格(金利)の乖離(かいり)は理論的に小さくなっていき、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を獲得する。理論上、リスクなしで利益を確保できるとされているが、実際には、情報収集力、豊富な資金力、取引が不成立に終わった場合などのリスク管理力などが必要とされる。
[矢野 武]
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