軟骨形成不全症

内科学 第10版 「軟骨形成不全症」の解説

軟骨形成不全症(先天性結合組織疾患)

 低身長と全身の骨格(体型)異常をもつ常染色体優性の遺伝性疾患であるが,家族歴がなく突然変異として発症する症例も多い.内軟骨性骨化の異常を示す.体型的特徴から200以上の亜系が含められている.
頻度
 最も頻度が多い病型である軟骨無形成症(achondroplasia)でも50000出生に1例程度である.軟骨形成不全症に含められるStickler症候群は10000出生に1例である.
臨床症状
 主要徴候として白内障,硝子体変性,網膜剥離,大きな前額,顔面中央の低形成,口蓋裂,短い四肢,四肢の捻転などがあげられる. Stickler症候群は上記に加え感音難聴や下顎の低形成,関節の脱臼や変性(変形性関節症)による疼痛を生じることから遺伝性進行性関節眼症(hereditary progressive arthro-ophthalmopathy)ともよばれている.四肢の異常に加えて小顎症,舌下垂,口蓋裂(Robin続発症)を認める場合,若年でありながら変形性股関節症を有するもの,あるいはMarfan様の特徴を有し聴力障害,変形性関節症,網膜剥離などを有する場合はStickler症候群の可能性が高い.
診断
 身体的特徴,眼科的検査,骨格系のX線検査で診断する.長管骨がより短くなるが体幹に近い長管骨ほど顕著である(rhizomelic shortening).また,骨密度は濃い.中手骨の遠位端はball-in-socket様にみえる.手指を伸展すると三叉手(trident hand)となる.腰椎X線では左右の椎弓根(interpedicular distance)が下方に行くほど開き,大坐骨切痕は小さく,水平臼蓋も特徴である.遺伝子異常としては軟骨に多いⅡ型コラーゲン遺伝子であるCOL2A1に異常を認める場合がある.特にStickler症候群ではCOL2A1以外にCOL11A1やCOL11A2に異常を認める.Ⅺ型コラーゲンα2は眼には存在しないので,COL11A2の異常によるStickler症候群では眼症状を欠く.また,軟骨無形成症(achondroplasia)では線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)の360位のグリシンアルギニンにかわった変異を示す症例が非常に多い.この変異によりFGFのシグナルが異常となり病的な軟骨形成を示す.
治療
 対症的・保存的治療が中心であるが,口蓋裂は手術適応がある.また,変形性関節症が進行した場合には人工関節への置換が必要となる.定期的に眼科受診を行い,網膜剥離に対する治療に備える.[簑田清次]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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