軟骨無形成症(読み)ナンコツムケイセイショウ(その他表記)Achondroplasia

デジタル大辞泉 「軟骨無形成症」の意味・読み・例文・類語

なんこつむけいせい‐しょう〔‐シヤウ〕【軟骨無形成症】

軟骨組織が正常に育たない先天性疾患。低身長体幹に比べて四肢が短いといった特徴がみられる。

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六訂版 家庭医学大全科 「軟骨無形成症」の解説

軟骨無形成症
なんこつむけいせいしょう
Achondroplasia
(子どもの病気)

どんな病気か

 生まれつきの全身の骨の病気です。四肢が胴体に比べて短いために、極端に身長が低くなります(四肢短縮型低身長(ししたんしゅくがたていしんちょう))。

 治療しない場合、身長は男子で平均130㎝、女子で平均120㎝ぐらいです。

原因は何か

 遺伝性の病気ですが、家系に同じ病気の人がいなくても遺伝子の突然変異で発病することがあり、むしろその場合のほうが大部分です。

 軟骨細胞などにある線維芽細胞(せんいがさいぼう)増殖因子受容体3型(FGFR3)の突然変異が原因です。これにより軟骨細胞の増殖は抑制され、骨の縦軸方向の成長が阻害されるために低身長になります。

 このほかの近位四肢短縮型低身長を起こす病気には、致死性骨異形成症(ちしせいこついけいせいしょう)軟骨低形成症(なんこつていけいせいしょう)などがあり、前者はすべて、後者は約半数が軟骨無形成症と同様にFGFR3の突然変異が原因です。

症状の現れ方

 全身の骨の病気なので、長管骨以外の骨でも軟骨の発育が侵され、頭蓋骨の底の部分が未発達で、顔の骨の形成も悪く、額の部分が飛び出て鼻の付け根が低いといった、特有の外見を示します。頭蓋骨の底の脊椎(せきつい)につながる部分の(あな)大孔(だいこう)大後頭孔(だいこうとうこう)ともいう)が狭すぎたり(大孔狭窄(きょうさく))、背骨の異常のためにそのなかを脊髄(せきずい)が通る空間が狭すぎたり(脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく))することもあります。

 大孔狭窄のために、脳と脊髄のなかを流れる脳脊髄液が大後頭孔でせきとめられ、脳のなかに異常にたまりすぎて、水頭症(すいとうしょう)を起こすこともありますが、大部分の場合は軽くて手術などをしなくてもすみます。

 脊柱管狭窄や胸腰椎部(きょうようついぶ)脊柱変形のために、四肢の麻痺(まひ)・しびれ・脱力感、あるいは歩行障害などの神経症状を起こすこともまれにはあります。

 また、このほかにも、胸椎と腰椎の移行部が後ろ側に弯曲していたり、腰椎が前側に弯曲(わんきょく)したりしています(胸腰椎部の脊柱変形)。そのため、臀部が大きく後ろに飛び出しており、下肢にはO脚が認められ、一見して身体の釣り合いがとれていないことがわかります。

 また、中耳炎を起こしやすい傾向があり、手の指を伸ばした時に2指と3指の間、または3指と4指の間が離れていることもあります(三尖手(さんせんしゅ))。

検査と診断

 骨のX線検査では、両端が幅広く太くて短い四肢の長管骨、シャンパングラスのような小さい骨盤腔、胸腰椎の前後弯(ぜんこうわん)などが特徴的です。

治療の方法

 現在のところ根本的な治療法はありません。最近、成長ホルモン投与による治療が行われるようになり、身長の伸び率やプロポーションの改善効果が認められています。外科的治療として脚延長術があります。手術時期は、身長の伸びが停止したあとがよいと思われます。

 また、合併率の比較的高い水頭症中耳炎に対しての注意も必要です。

山中 良孝

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「軟骨無形成症」の解説

なんこつむけいせいしょう【軟骨無形成症 Achondroplasia】

[どんな病気か]
 遺伝性の病気で、おとなになっても、身長が120~130cm程度にとどまります。とくに手足の成長が悪いため、独特の体型を示す代表的な病気です。
 発生頻度は1万人あたり0.5~1.5人といわれており、遺伝する病気としては多いほうです。
[症状]
 頭が大きく、額(ひたい)が突き出て、鼻のつけ根は陥没(かんぼつ)し、あごも突き出た特有の顔貌をしています。
 胴体(どうたい)の長さに比べて、手足が極端に短くなります。
 健康状態は良好で、知能の低下もなく、筋力低下もみられません。
 原因として、最近、遺伝子(線維芽細胞増殖因子受容体(せんいがさいぼうぞうしょくいんしじゅようたい)3という遺伝子)の異常によっておこることがわかってきました。
[検査と診断]
 出生後の体型や、X線検査によって、診断することができます。
 また、妊娠中でも超音波検査で診断が可能です。
 正常な両親からこの病気の子どもが生まれる場合もありますが、その子の後に生まれる子ども(弟や妹)に、続けてこの病気が発症することは、まず考えにくいといわれています。
 根本的な治療法は、いまのところありません。
[治療]
 低身長(ていしんちょう)に対しては、幼児期に成長ホルモンを投与する療法を行なうこともあります。
 手術によって、脚(あし)を伸ばす方法がとられることもあります。

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