改訂新版 世界大百科事典 「農村物価指数」の意味・わかりやすい解説
農村物価指数 (のうそんぶっかしすう)
農家の販売ないし購買する商品の価格変動を表す物価指数。現在農林水産省では,〈農産物価格指数〉と〈農家購入品価格指数〉とを農村物価指数として作成している。農家購入品価格指数は,さらに〈農業生産資材価格指数〉と〈生活資材価格指数〉とに分けて作成されている。指数算式はいずれもラスパイレス型であって,基準時(特定の1年)の販売額ないし購買額をウェイトとする加重平均指数である。ウェイトは農業経営統計調査によって求められ,5年ごとに改訂されて,連鎖指数の形で接続される。農産物価格指数は,農家の販売する農産物についての,農家受取価格の指数であって,銘柄を指定された103品目について,標本市町村を定めた調査を行って価格を把握している。指数は農産物総合のほかに,米,野菜,畜産物など11類別につくられている。農業生産資材価格指数は,農家の購入する肥料,飼料,農機具などの価格指数である。価格は農家の支払価格で,農産物価格と同様の方法で147品目について調査されている。生活資材価格指数は,農家の購入する消費財281品目の価格指数であり,ほぼ非農家における消費者物価指数に対応するが,農家の場合,食料品の自給が多いので,食費のウェイトが低くなる。そのために,自給部分を含めた農村消費者物価指数が別に作成されているので,デフレーターとして用いるときは適切なほうを選ぶよう注意しなければならない。そのほかに,農産物の行政価格を定める資料に利用される指数として,農業パリティ指数がある。これも農家購入品価格の価格指数である。パリティ(均衡)は,農家の購入品価格と販売品価格との均衡を意味し,現在でも,米,麦類,ダイズ,ナタネ,テンサイ,サトウキビ,原料用カンショ・バレイショの行政価格を決める資料として直接あるいは間接的・部分的に用いられている。
執筆者:荏開津 典生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報