農家や農業法人などの農産物販売者に、米などの農産物の販売価格と生産コストの差額を直接補填(ほてん)する制度。販売価格が生産コストを下回った場合、国が税金を使って差額を補償する。日本では、2009年(平成21)の総選挙で、当時の民主党(現、民進党)がマニフェストに掲げ、2010年度にまず米生産者に導入し、2011年度には麦や大豆などの畑作物生産者にも広げた。
米に対する補償は、生産調整(減反)への参加が支給条件である。定額部分(所得補償交付金)と変動部分(米価変動補填(ほてん)交付金)があり、定額部分として、米生産者に標準販売価格と生産コストの差である10アール当り1万5000円を支給し、変動部分は販売価格が過去一定期間の平均販売価格を下回った場合に追加的に支払うこととされた。このほか食用米から麦・大豆などへ転作した農業者に払う助成金や、農地を拡大した農業者への上積み金などもあった。
民主党は当初、補償目的を「小規模農家を含めた日本農業の継続」としていたが、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟論議と絡め、大規模化など競争力強化を目ざす農業者への上積み支給を始めるなど、政策の目的が揺らいだ。2012年の政権交代で誕生した自民党、公明党の連立政権である安倍晋三(あべしんぞう)政権は名称を「経営所得安定対策」に変更し、2014年度から補償額を半分に減らし、2017年度を最後に、補償制度を打ち切る計画である。安倍政権は農業者戸別所得補償制度にかわって、2014年度から農地の国土保全や景観維持などの多面的機能を維持するための「日本型直接支払制度」を導入した。
なお、生産量と切り離して農業者に直接所得補償する制度はデカップリングdecoupling(切り離し)政策とよばれ、アメリカやヨーロッパ連合(EU)諸国などで広く導入されているが、各国とも政策の目的を農業保護などと明確にしている。
[矢野 武 2016年10月19日]
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