為替(かわせ)操作などのために、2国間の直接取引によらないで、第三国を経由して迂回的に行う貿易をいう。第二次世界大戦後、外国為替管理が厳しく行われていた時期には、輸出代金は原則として米ドルなどの標準的な外貨で受け取ることが必要とされた。しかし、標準的な外貨以外で受け取るほうが貿易業者に有利な場合には、為替管理の抜け道として迂回貿易という方法がとられた。たとえば、英ポンドがまだ交換性をもたなかった時期には、イギリスからアメリカへの輸出代金は、米ドルあるいはアメリカ勘定の英ポンドで受け取らねばならなかった。一方、ヨーロッパ大陸との間の決済に用いられる振替可能ポンド勘定の英ポンドは、自由に米ドルと交換することはできなかったが、イギリス以外のヨーロッパ大陸では、公定のレートよりも低いレートでなら米ドルと交換できた。そこで、アメリカの貿易業者がイギリスから商品を輸入する際に、それを一度ヨーロッパ大陸の国に輸入して、それをさらにアメリカに再輸入するという迂回的な操作をすることによって、低いレートの振替可能ポンドで決済が可能になり、利益を得ることができたのである。しかし交換性が回復(1958)してからは、このような迂回貿易は消滅した。
[志田 明]
2国間の貿易取引に第三国の業者を介在させ,商品を迂回的に輸出する方法ないし貿易をいう。たとえば,アメリカの輸入業者AがイギリスのBからウィスキーを購入しようとする場合に,直接にAとBとの間で輸出代金の決済を行うかわりに,Cという日本の商社を介在させる。そして,形式的には日本に輸出することにして決済を行い,商品はアメリカ積替え日本行きで迂回的に輸出して,実際には寄港地のアメリカで処理する方法である。このような迂回的な貿易取引が行われるのは,たとえば,為替管理法によって,アメリカへの輸出代金はアメリカ勘定のポンドまたはドルで回収することが決められている場合に,これを回避するためである。
執筆者:佐々波 楊子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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