日本大百科全書(ニッポニカ) 「透波」の意味・わかりやすい解説
透波
すっぱ
素波・水波とも書く。戦国大名たちが抱え置いた忍びの上手の一群、その別名・俗称。一般に甲州以西、伊賀・甲賀などでも「すっぱ」といい、関東では「らっぱ」(乱波)、所により「とっぱ」(鳥波・突破)などとよんだ。『武家名目(みょうもく)抄』には「透波とよばれる種類は、大かた野武士・強盗などの内より、よび出されて扶持せらるゝもの、されば間者(かんじゃ)・かまり(物見(ものみ))・夜討(ようち)などには殊(こと)に便(べん)あり」といい、『北条(ほうじょう)五代記』には「乱波と名付、……其国々の案内(あない)をよく知り、心横道(よこみち)なる曲者(くせもの)多かりし、……横道なる者となり」といっている。また美濃(みの)・近江(おうみ)の透波のうち、醒井(さめがい)の韋駄天(いだてん)、変化(へんげ)の六平(ろっぺい)、竜馬(りょうま)の小八(こはち)などとよばれる早道(はやみち)の一番(いちばん)や忍びの名人たちには、並(なみ)の透波の宛行(あてがい)の5人前を給せられたという。
[渡邉一郎]