…女性用の筥迫(はこせこ)には鏡・櫛・おしろいなどを入れることもあった。旅先ではすりから路銀を守るため,早道(はやみち)などと呼ぶ腰にさげる袋に入れて持ち歩いた。明治になって紙幣が発行(1869年に民部省札)され,二つ折り,三つ折りで使用する札入れが普及,初期には着物の胸もとの形を整わせるため分厚いものが好まれたが,洋服着用者の増加とともに形態も洋服用のものが多くなる。…
…発火器としての燧袋は,匂袋(においぶくろ)とともに腰さげ袋として古くから用いられ,のち金銭や薬品を入れるようになり,鎌倉時代には巾着(きんちやく)の発生をみた。 貨幣経済の発達は金銭携行のための袋物を発達させ,江戸時代には早道(はやみち)(銭入れ,タバコ入れに用いる),胴乱,一つ提(さげ)(タバコ入れの一種で,きせる筒を離し,タバコ入れのみに緒などをつけた袋),藩札入れ,燕口(つばくらぐち)(口を開くとツバメの口のような形になる携帯用の袋)が用いられることになり,タバコの伝来に伴う喫煙の風習は半月,腰差,叭(かます),火の用心,袂落(たもとおとし)等のタバコ入れを生んだ。また,上下一般が鼻紙を用いるようになって懐中物の鼻紙袋ができ,これに鏡,ようじ,小銭を入れる仕掛けをつくって三徳ととなえ,女子の愛用するところとなり,筥迫(はこせこ)に近づいていった。…
※「早道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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