曲者(読み)クセモノ

デジタル大辞泉 「曲者」の意味・読み・例文・類語

くせ‐もの【曲者/癖者】

盗賊などの怪しい者。「―が忍び込む」
ひと癖あって、したたかな人物。「ああみえて彼はなかなかの―だ」「―ぞろい」
表面には現れていない何かがありそうで、油断できないこと。「話のうますぎるところが―だ」
普通とは違った人物。なみなみでない人。
「光盛こそ奇異の―組んで討って候へ」〈平家・七〉
[類語]凶漢凶賊奸賊海賊山賊賊徒賊子逆賊謀反人悪人悪者悪漢悪党悪玉悪女毒婦食わせ物詐欺師山師ペテン師いかさま師あくわる凶徒凶手人非人人でなし奸物暴漢暴れ者暴れん坊暴徒荒くれ者ごろつきならず者地回りやくざ暴力団無頼漢無法者与太者ごろちんぴらあぶれ者

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精選版 日本国語大辞典 「曲者」の意味・読み・例文・類語

くせ‐もの【曲者・癖者・曲物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 普通とはどこか違ったところのある人や物。
    1. (イ) 変わりもの。奇妙なもの。一癖あるもの。変人
      1. [初出の実例]「光盛こそ奇異のくせ者くんでうって候へ」(出典:平家物語(13C前)七)
      2. 「寺中にも重く思はれたりけれども、世を軽く思ひたる曲者にて」(出典:徒然草(1331頃)六〇)
    2. (ロ) なみなみでないもの。また、すぐれて巧みな人。よい腕前の人。妙手
      1. [初出の実例]「疾く行くか、重なる山の木末よりと、一声に移りしくせ者也」(出典:申楽談儀(1430)喜阿)
  3. あやしいもの。
    1. (イ) 悪者。不心得もの。
      1. [初出の実例]「和田殿ききて、こはいかに、くせものとほりけるよ」(出典:曾我物語(南北朝頃)九)
      2. 「我君の御命をねらひ奉るくせものなり」(出典:御伽草子・唐糸草子(室町末))
    2. (ロ) えたいの知れないもの。危険なもの。用心しなければならないもの。
      1. [初出の実例]「是こそ件の院と云くせ者よ」(出典:太平記(14C後)二三)
      2. 「ただ、殆ど荷物らしい荷物を持ってゐないのがくせものだった」(出典:桐畑(1920)〈里見弴〉ワキ)
    3. (ハ) ばけもの。怪物
      1. [初出の実例]「何鳥と云ふ事を知ろしめさず、癖物(クセモノ)なりとて御評定有り」(出典源平盛衰記(14C前)一)
    4. (ニ) 奇怪な姿形をしたもの。
      1. [初出の実例]「いづくも不具に異様なるを見て、とりどりにたぐひなき曲者なり」(出典:徒然草(1331頃)一五四)
    5. (ホ) 私娼(ししょう)
      1. [初出の実例]「大溝あって日影うつろうに掉竹(さほたけ)のわたし、とびざやの(きゃふ)、糠ぶくろ懸て有しはくせものなり」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)二)
    6. (ヘ) 泥棒盗人密偵(みってい)
      1. [初出の実例]「ぐっと突込天井の。板こじ放せば怪しき曲(クセ)者」(出典:浄瑠璃伽羅先代萩(1785)六)
    7. (ト) いやしい者。下賤のもの。
      1. [初出の実例]「灯呂共被下地下曲者等了」(出典:実隆公記‐延徳二年(1490)七月一六日)

きょく‐しゃ【曲者】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 芸能にすぐれた人。芸能をよくする人。
    1. [初出の実例]「ただなまりの内の是非を聞き分くる事、堪不の曲者によるべし」(出典:五音曲条々(1429‐41頃))
  3. 能楽で、音曲演者
    1. [初出の実例]「Archimimus〈略〉アソビュウド、ヲトギ、qiocuxano(キョクシャノ) カシラ、キャウゲンダユウ」(出典:羅葡日辞書(1595))

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