通商法301条

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

通商法301条

外国による不公正な貿易慣行に対し、大統領の判断で一方的に関税引き上げなどの制裁措置が取れる。日米経済摩擦が激しかったレーガン政権時代の80年代以降に頻繁に使われたが、世界貿易機関(WTO)は一方的な制裁措置は認めておらず、制裁に踏み切ればWTO協定違反になる可能性がある。95年のWTO発足以降はほとんど使われていなかった。

(2017-08-20 朝日新聞 朝刊 2総合)

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知恵蔵の解説

通商法301条

米国の包括通商法(1974年制定)の条項の一つで、不公正と判断された貿易に対して、相手国と協議すること、さらに解決できない場合には、米国が制裁措置を発動できることなどを定めている。不公正かどうかは、大統領の補佐機関である米通商代表部(USTR)が調査・判断し、制裁措置の発動は大統領が行う。いずれも大統領権限によるもので、議会の承認は必要ない。
日米の貿易摩擦が激化した80年代末には、不公正貿易の完全撤廃を目的に、対象国に対する関税引き上げや輸入制限といった具体的な報復措置が盛り込まれた。2年間(89年~90年)の時限立法で、スーパー301条と呼ばれる。強硬な報復措置を認めたスーパー301条は、自由貿易に反する保護主義政策として国際社会から批判されたが、日本のほか、インド、ブラジルも対象となった。その後、クリントン政権下に二度復活したあと、2001年に失効している。
世界貿易機関(WTO)が発足した1995年以降は、通商法301条の発動は控えられるようになった。WTOは国際協調に基づく公平な自由貿易の発展を目的としており、相手国との交渉・協議を経ずに強硬発動すると、協定違反になる恐れが高いためである。WTOには、世界第2の経済大国である中国も2001年に加盟している。その後、中国製品の輸入が激増し、自国産業に打撃を与えるようになったため、米国は再び保護主義路線に舵(かじ)を切るようになった。18年4月には、対中貿易赤字の解消を目指すトランプ大統領が、中国に対して通商法301条に基づく制裁措置を発動すると発表。中国企業による知的財産権侵害を理由に、1300品種もの輸入品に高額の関税を上乗せさせるという内容だった。これに中国の習近平政権が猛反発。同規模の報復措置を表明したことから、世界経済を揺るがす貿易戦争に発展するとの懸念が広がった。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

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知恵蔵miniの解説

通商法301条

1974年に制定された米国通商法の条項の一つ。貿易相手国の不公正な取引上の慣行に対する当該国との協議や、問題が解決しない場合の制裁について定めている。米通商代表部(USTR)が不公正な貿易があると判断した場合、大統領権限で関税引き上げなどの報復措置を科すことができる。88年の包括通商・競争力法において改正・強化が行われ、相手国の組織的な貿易慣行の除去を目的とした「スーパー301条」(74年通商法310条)が盛り込まれた。当初、スーパー301条は2年間の時限立法であったが、その後、失効、復活を繰り返し、2001年に失効した。日本については同国との貿易摩擦が激しかった1980~90年代に通商法301条、スーパー301条が適用されている。こうした一方的な措置に対する国際的な反発は大きく、世界貿易のルール作りを担う世界貿易機関(WTO)が発足した95年以降は、ほとんど発動されてこなかった。しかし、2018年にトランプ大統領が中国に対して通商法301条に基づく制裁措置の発動を決定し、両国の貿易摩擦の激化に伴う世界経済への影響が懸念されている。

(2018-3-27)

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