①先天的要因 腎臓は
②後天的要因 腹筋の弛緩、腹圧低下に加えて、腎周囲脂肪組織の低下があげられます。いずれにしても、立位では肝臓など重量に富む臓器の荷重負荷がかかるなどの要因から、右腎は左腎と比較して下垂しやすくなっています。
臥位・座位などによりおさまる腰痛、側腹部痛、腰背部痛を訴えることが多く、その多くは鈍痛で、立位歩行や荷重などで、症状が悪化します。
血尿は、腹痛と並んで遊走腎でよくみられる症状で、通常は目に見えない顕微鏡的血尿が主体です。肉眼的血尿がみられることもありますが、血尿により貧血を生じることはありません。また立位で背中を反る体位をとった時に、軽微な
尿路症状として
臥位と座位における腎臓の触診と、静脈性尿路造影での臥位と座位での腎臓の位置の比較が診断の中心となります。
静脈性尿路造影では、立位負荷をかけた時の腎臓の下垂の程度に加えて、腎臓の回転、捻転、偏位および
遊走腎は症状がない場合はそのまま経過観察し、上記のような症状がある場合でも、原則的に保存的治療を優先すべきです。重い病気ではなく、腎不全にはならないことを理解することが重要です。
保存的治療としては、やせている人は腎周囲の脂肪を増加させ、腎臓の支持・補強を行うため体重を増加させます。
また、理学療法として腹筋・背筋力強化のための運動療法を行うとともに、コルセットや腹帯などを用いて腹壁の緊張を保持します。
遊走腎に対する単独の手術として腎固定術が行われることは、極めて少数です。
泌尿器科を受診し、専門医からこの病気について説明を受け、治療法に関して相談をしてください。
来栖 厚
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
腎臓は正常でも呼吸運動とともに数cm上下に移動するが,この範囲をこえて大きく移動する場合をいう。とくに下方に移動していることが多く,これを腎下垂症nephroptosisと呼び,本症とほぼ同義語に用いられている。腎臓は,腎動脈や腎静脈および腎臓周囲の脂肪組織によって,腰背部の後腹膜腔に固定されている。先天的にこの腎血管が異常に長い場合や,腎臓周囲の脂肪組織の発育不全があると,本症が起こると考えられている。後天的には,やせすぎなどが原因となることもある。20歳以上の女性に多い。症状は腰背部や腹部の鈍痛,胃腸症状,不安,ヒステリー様症状など多様であるが,これらがすべて本症によって起こるとはかぎらない。同時に胃や腸など他の内臓下垂症を伴っていることが多いからである。治療は腹帯の着用や全身の体力増強などの保存的療法を行うが,軽度なものでは治療の必要はない。症状の強いものや下垂が著しくて腎臓が骨盤内に入るような場合は,手術によって腎臓を正常な位置に固定する。
執筆者:上野 精
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
腎臓は呼吸、体位により生理的に2~5センチメートルの範囲内で上下に移動するが、この範囲を超えて移動する場合をいう。一般に右腎に著明で、20~40歳の体形的にやせた女性に多く、内臓下垂症の一種とされている。腎または腰部の鈍痛時に仙痛、頻尿、排尿痛などの膀胱(ぼうこう)症状、悪心(おしん)などの消化器症状、種々の神経症状を訴え、血尿、膿尿(のうにょう)などがみられることもある。腎臓の触診と臥位(がい)と立位の排泄(はいせつ)性腎盂(じんう)撮影で診断することができ、症状が軽いものは腹帯や肥満療法で軽快することが多いが、症状が著明なものや合併症を伴うものは腎固定術を行うことがある。
[土田正義]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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