過安息香酸(読み)かあんそくこうさん(その他表記)perbenzoic acid

改訂新版 世界大百科事典 「過安息香酸」の意味・わかりやすい解説

過安息香酸 (かあんそくこうさん)
perbenzoic acid



安息香酸の過酸化物ということで,この名がある。無色板状結晶で,融点41.3~42℃。大部分有機溶媒可溶,水,石油エーテルには難溶。ひじょうに不安定で,加熱すると爆発的に分解するため取扱いに注意を要する。製法無水安息香酸過酸化水素との反応,または過酸化ベンゾイルナトリウムアルコキシドを作用させて得られるナトリウム塩を冷希硫酸で分解する方法による。

強い酸化作用をもつため酸化剤として用いられるが,とくにエチレン結合エポキシ化に有効である。このとき,爆発の危険がないことから,過安息香酸の誘導体であるm-クロロ過安息香酸が実験室的エポキシ化反応に用いられる。また室温で,クロロホルム中で試料にやや過剰の過安息香酸を反応させ,未反応の過安息香酸を逆滴定することにより,エチレン結合定量に利用される。
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化学辞典 第2版 「過安息香酸」の解説

過安息香酸
カアンソクコウサン
perbenzoic acid

peroxybenzoic acid.C7H6O3(138.12).C6H5COOOH.過酸化ベンゾイルを0 ℃ でナトリウムメトキシドで分解させるか,無水安息香酸を過酸化水素で酸化すると得られる.無色の結晶.融点41~43 ℃,沸点97~110 ℃(1.7~2.0 kPa).エーテル,クロロホルムなどの有機溶剤に可溶.強い酸化剤で,結合を容易にエポキシ化するので,合成反応や二重結合の定量に使われる.[CAS 93-59-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「過安息香酸」の意味・わかりやすい解説

過安息香酸
かあんそくこうさん
perbenzoic acid; benzoyl hydroperoxide

化学式 C6H5C(O)OOH 。強い酸化作用を示し,熱に不安定で爆発性のある無色の昇華性結晶。融点 41~43℃。水に溶けにくいが,水に触れると液化する。多くの有機溶媒に可溶。過酸化ベンゾイルにメチルアルコール中でナトリウムメチラートを作用させてつくられる。無水安息香酸と過酸化水素の反応でも生成する。エチレン結合に作用させるとエポキシドを生成するので,不飽和結合の定性やエポキシ環を経由する有機合成に広く用いられる。

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