日本大百科全書(ニッポニカ) 「過密問題」の意味・わかりやすい解説
過密問題
かみつもんだい
企業や人口の密集によって生ずる問題状況。日本の経済は、行政面での中央集権制との関係もあって、東京に向かっての求心的構造をもっている。そのため、地域経済の構造変化も、求心的構造の強化という形で展開している。とくに第二次世界大戦後の高度成長は、資本と労働とを特定の局所に集積、集中させ、生産、流通、消費活動の中心的場所としての都市を形成しながら、しだいに地域経済構造を変えてきた。
一般的にいって、企業が適度に集中することは、企業の採算性を有利にし、社会資本の効率を高めるが、利用すべき外部経済の拡大以上に企業や人口が密集すると、いわゆる過密の弊害を生むことになる。具体的には大気汚染、水飢饉(ききん)、住宅難、交通渋滞などがそれであるが、これは、集積の利益以上に密集の弊害が、企業活動においても人間の社会生活においても耐えがたい状態になっていることを意味する。これは、人口や経済活動の集積に対して、都市施設ないし都市的サービスの供給が不足していること、つまり「入れ物」と「中身」の間の相対的なバランスが崩れたことを意味している。日本経済は、面積当りの人口密度が高いだけでなく、所得密度や投資密度、さらに情報密度や交流密度も高く、高密度・高流動性社会として特色づけることができる。このような高密度社会のうえに高度成長を遂げ、大量生産、大量販売、大量消費、そして大量廃棄が進行したのであるから、環境基準や公害規制を厳しくする必要がある。
過密問題を解決するためには、第一に産業および人口の無秩序な大都市流入の抑制、第二に都市機能の地方分散の促進、第三に地方都市の開発整備が必要である。過密問題は、単に物理的な意味でのアンバランスの問題にとどまるものではない。たとえば水不足問題は、所得水準の上昇と生活様式の高度化に伴う水需要の増大に対して、供給が追い付かなかったという面がある。所得要因を重視すべきである。
[伊藤善市]
『伊藤善市編著『過密・過疎への挑戦』(1974・学陽書房)』▽『野呂田芳成著『大都市政策』(1974・産業能率短期大学出版部)』▽『伊藤善市監修『期待される新しい地方都市づくり』(1979・三修社)』