家庭医学館 「選択性緘黙」の解説
せんたくせいかんもく【選択性緘黙 Elective Mutism】
家族や親しい人とはふつうに会話をしますが、幼稚園や学校ではまったく話をしないといったように、場面や相手によってことばを発しなくなる現象を選択性緘黙(場面緘黙(ばめんかんもく))といいます。幼稚園や保育園といった比較的早い時期から出現することが多く、その場の雰囲気や人物に圧倒され、萎縮(いしゅく)・緊張している子どもが、自分の内面へ引きこもっていると理解できます。
このような反応を長期間にわたって続ける背景には、母親から離れることの不安(分離不安)や、家庭外での社会的な活動に参加していくための力が十分に育っていないこと(経験不足)などがみられます。また、一部には、周囲から指示されたり動かされたりすることに対する抵抗を「喋(しゃべ)らない」ということで意志表示している、と理解できる場合もあります。
[治療]
まずたいせつなのは、周囲のおとなたちが「話すことを無理強いしない」ことです。無理に話させようとすれば、ますます萎縮・緊張したり、おとなに強制されたと感じて引きこもるといった悪循環に陥ってしまいます。喋らないでその場にいることを周囲が認め、本人がその場に慣れて自分らしさを発揮できるような援助が必要です。
また、外の世界での経験不足を補う意味で、習い事などさまざまな活動への参加も有効なことがありますが、選択性緘黙の背景には分離不安が存在していることが多いので、母親が無理に離れようとしてもうまくいかないことがあります。焦(あせ)らず、子どものペースを尊重してあげてください。