長閑けし(読み)ノドケシ

デジタル大辞泉 「長閑けし」の意味・読み・例文・類語

のど‐け・し【長閑けし】

[形ク]
落ち着いてのんびりしている。のんきでゆったりしている。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心は―・からまし」〈古今・春上〉
天候が穏やかである。のどかで、うららかである。 春》
「かきたれて―・き頃の春雨にふるさと人をいかにしのぶや」〈真木柱
たいくつなほど暇である。
「つくづくと一年を暮らすほどだにも、こよなう―・しや」〈徒然・七〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「長閑けし」の意味・読み・例文・類語

のど‐け・し【長閑けし・閑けし】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「けし」は接尾語 )
  2. 状態、雰囲気(ふんいき)などが、静かで穏やかなさま。
    1. [初出の実例]「いさり火もあまのをぶねものどけかれいけるかひある浦にきにけり」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  3. 天気がよくて、静かで穏やかなさま。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「久かたの光りのどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ〈紀友則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・八四)
  4. 性質や気持がゆったりと落ち着いていて、穏やかなさま。激しやすくないさま。
    1. [初出の実例]「うしろやすくのどけき所だに強くは」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  5. 十分時間があり、気持にもゆとりがあって、あわただしくないさま。ゆっくりしているさま。
    1. [初出の実例]「世中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし〈在原業平〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・五三)
  6. 何事も起こらないで暇なさま。
    1. [初出の実例]「まぎるる事なくのどけき春の日に」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
  7. 気にかけないさま。安心しているさま。のんきなさま。
    1. [初出の実例]「客人(まらうど)御方、男なんどたちまじらねばのどけし」(出典蜻蛉日記(974頃)上)

長閑けしの派生語

のどけ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android