日本大百科全書(ニッポニカ) 「開元占経」の意味・わかりやすい解説
開元占経
かいげんせんきょう
中国唐代の天文、占星術などに関する書。718~726年(開元6~14)に中国在住のインド人天文学者瞿曇悉達(くどんしった)らが撰(せん)した。全120巻。正式には『大唐開元占経』という。いったん失われたが、明(みん)代に古仏の腹中から発見され、今日まで内容が伝えられた。巻1、2は宇宙構造論など、巻3~102は天文・気象・地質学的な現象や生物のようすなどによる古今の占法が集められている。ほとんどが今日では失われてしまった緯書、占星術書、天文学書などからの引用であり、それらの書の内容を知る資料として重要である。巻60~63に収載されている115個の恒星の座標は前70年ごろの観測に基づくと推定される。巻103~110には中国の古今の暦法が記され、とくにインドの天文学書の翻訳である九執暦(きゅうしつれき)が収録されているのも貴重である。末尾10巻(動植物や人の奇異な現象などについて記す)は後世に付加されたと考えられる。
[宮島一彦]
『藪内清著『隋唐暦法史の研究』増訂版(1989・臨川書店)』