闇の奥(読み)ヤミノオク(その他表記)Heart of Darkness

デジタル大辞泉 「闇の奥」の意味・読み・例文・類語

やみのおく【闇の奥】

《原題Heart of Darknessコンラッド中編小説。1899年発表。欧州文明による植民地支配主題とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「闇の奥」の意味・わかりやすい解説

闇の奥
やみのおく
Heart of Darkness

イギリスの作家コンラッドの中編小説。1899年刊。マーロウ船長が、アフリカ奥地を訪ねたときの経験を語る、という形で書かれている。地図を見て暗黒世界の魅力に抗しきれず、コンゴ川をさかのぼった彼が現地で見たものは、人間性の暗黒だった。交易と称して実は支配と搾取を続けながら、自らも精神的に荒廃してゆく白人たち。とくに興味をひき強烈な印象を与えるのは、クルツという人物である。彼は現地人たちに神のごとく畏敬(いけい)され、象牙(ぞうげ)の収奪に狂気じみた執念を燃やす男であり、その最期をみとったマーロウは、巨大な空虚を感じて慄然(りつぜん)とする。異様な雰囲気とともに人間性の恐るべき深淵(しんえん)を象徴的に描いた名作。

[高見幸郎]

『中野好夫訳『闇の奥』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「闇の奥」の意味・わかりやすい解説

闇の奥
やみのおく
Heart of Darkness

イギリスの小説家 J.コンラッドの中編小説。 1902年刊。コンゴに派遣された船乗りマーロー語り手となり,原始の圧倒的な自然背景に,黒人の文明化という理想を破壊され,カリスマ的力で先住民を支配して略奪貿易を推進する白人クルツの死を語る。アフリカでの体験をもとにした,コンラッドの代表作の一つ。

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世界大百科事典(旧版)内の闇の奥の言及

【一人称映画】より

…しかし,映画が人物の主観の中に入っていくという実験的意義は評価されたものの,このような一人称描写が人間の心理の内面を描く技法となりえたかは疑問視されている。ハリウッド映画の常識を破ったオーソン・ウェルズも,彼の最初の映画としてジョゼフ・コンラッド原作の《闇の奥》を全編一人称カメラで映画化しようとして果たさなかったが,代りに撮ることになった《市民ケーン》(1941)の,アンケートするレポーターの主観描写に,一人称カメラのなごりが見られる。【柏倉 昌美】【山田 宏一】。…

※「闇の奥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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