日本大百科全書(ニッポニカ) 「隆線文土器」の意味・わかりやすい解説
隆線文土器
りゅうせんもんどき
粘土紐(ねんどひも)貼(は)り付けによる文様をつけた深鉢形土器で、縄文時代草創期(早期、土器出現期)の初めを特徴づける日本最古の土器。(1)長崎県泉福寺(せんぷくじ)洞穴出土の豆粒文土器、(2)長崎県福井洞穴の太い隆線を口縁部に数条貼り付けた土器、(3)長野県石小屋洞穴、東京都なすな原遺跡の細く低い微隆起線をつけた土器、(4)山形県日向(ひなた)洞穴のような微隆起線とハの字状爪形(つめがた)文を施文した土器、の順序で変遷する。口縁部は水平で平底または丸底、器厚5ミリメートルくらいのもろい土器。製作法は円板状の粘土を継ぎ合わせて成形しており、縄文土器一般の積上げ法とは違う。
九州地方の隆線文土器には細石刃(さいせきじん)が共伴し、本州、四国の隆線文土器には有舌尖頭器(ゆうぜつせんとうき)、スクレーパーが伴う。先土器時代から縄文時代への推移は複雑であったが、隆線文土器の斉一性は強く、撚糸(よりいと)文・押型文土器以降の地域差はまだ生まれてないようである。
[十菱駿武]
『岡本勇編『縄文土器大成早期』(1981・講談社)』▽『小林達雄編『縄文文化の研究3 縄文土器Ⅰ』(1983・雄山閣出版)』