随に(読み)マニマニ

デジタル大辞泉 「随に」の意味・読み・例文・類語

まにま‐に【随に】

[連語]《「」は格助詞
他人意志事態の成り行きに任せて行動するさま。ままに。まにま。「波の随に漂う」
ある事柄が、他の事柄の進行とともに行われるさま。…につれて。…とともに。
松風の寒き―年をへてひとり臥すらむ君をこそ思へ」〈宇津保・国譲下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「随に」の意味・読み・例文・類語

まにま【随】 に

  1. ( 連体修飾句を受け、全体が連用修飾句として用いられる )
  2. 行動の決定を他に任せて、他の意志や事態の成り行きに従うさまを表わす語。ままに。
    1. [初出の実例]「天へ行かば 汝(な)が麻爾麻爾(マニマニ)(つち)ならば 大君います」(出典万葉集(8C後)五・八〇〇)
  3. ある事柄につれて他の事柄も進行しているさまを表わす語。…につれて。…とともに。
    1. [初出の実例]「苗代のこなぎが花をきぬにすり馴るる麻爾末仁(マニマニ)あせかかなしけ」(出典:万葉集(8C後)一四・三五七六)
  4. 思いのままに。任意に。
    1. [初出の実例]「この外に猫のよび名を、〈略〉主の随意(マニマニ)名づけ給へ」(出典:読本・南総里見八犬伝(1814‐42)二)

随にの語誌

( 1 )奈良時代の口頭語で、「万葉集」や「続日本紀」宣命では「まにま」と「まにまに」が併用されている。用例からすると「まにま」の方が新しいが、「まにま」から「まにまに」へ転じたとする説と、「まにまに」から「まにま」へ転じたとする説とがある。
( 2 )平安時代には訓点資料で見ると、九世紀中頃より「まにまに」から「ままに」へ移行したと推察される。但し、訓点資料では「ほしきまにまに」や「ほしきままに」の固定した形で使用されていて、「まにまに」や「ままに」の単独用法には乏しい。
( 3 )和歌では「古今集」に「まにまに」が六例、「ままに」が一例みえるが、その後は「まにまに」は減少し、一二世紀初頭には歌の中でも使用されなくなり、「ままに」にとって代わられる。
( 4 )平安時代の散文では、「まにまに」は少なく歌の中での使用に限定される。その例も「伊勢」「大和」「宇津保」「蜻蛉」に少数例あるが「枕」や「源氏」には見えない。「ままに」は対照的に散文に多用されている。

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