心房細動は、心房が1分間に450~600回の頻度で不規則に興奮し、その興奮波が
房室結節の伝導がよければ心室応答数は多くなり不規則な
心房細動は、
持続性心房細動の一部と永続性心房細動を合わせて慢性心房細動といいます。
心房細動は、
高血圧を含めた基礎疾患がなく、明らかな原疾患が確認できない心房細動を孤立性心房細動といいます。心房細動の2.1~15%が基礎疾患のない
孤立性心房細動も一過性心房細動として発症し、次第に心房細動を繰り返すようになって、慢性心房細動へ移行します。
心房細動を起こすのは、心房内を不規則に興奮が旋回するリエントリー(回帰興奮および回帰収縮)と考えられていますが、多くの心房細動は肺静脈を起源とした期外収縮が引き金になって生じることが明らかになりました。また、肺静脈内の頻拍が左心房内へ伝わり、心房細動になることもあるようです。
発作性頻拍と同じように心房細動が新たに始まる時には、突然始まる動悸として自覚されることが多いようです。胸がもやもやする、胸が
発作性心房細動を繰り返す時は、症状は強いのが一般的です。意識はあり動けるのですが、仕事が手につかなかったり、集中できません。致死的な不整脈ではありませんが、生活の質(QOL)は低下します。
ここまでに至る期間には個人差がありますが、心房細動は一過性から発作性を経て持続性になり、最後に永続性になります。
脈をとったり心音を聞いて心房細動を疑うことはできますが、確実ではありません。正確な診断には心電図が必要になります。
また、基礎疾患の有無や心機能を把握するために、甲状腺機能試験を含めた血液生化学検査、心エコー検査、12誘導心電図、胸部X線検査も必要です。心房細動の病型をみるには、24時間ホルター心電計を装着します。
●レートコントロールとリズムコントロール
頻脈の脈拍数を抑えると、自覚症状が消えることがあります。そのためには房室結節の伝導を抑えればよいのです。
心房細動中の心拍数を減らして自覚症状の軽減を急ぐ時には、ジギタリスやカルシウムチャネル遮断薬のベラパミルを点滴静脈注射(静注)します。経口薬としてはジゴキシン、ベラパミルのほかにジルチアゼム、
心房細動のままで心拍数をコントロールし、脳梗塞予防のための塞栓症治療を併用する治療法を、レートコントロール療法といいます。
一方、心房細動を
心房細動の除細動には電気ショックや、抗不整脈薬の静注または経口投与が行われます。電気ショックは心機能が低下していたり、薬剤が効かなかったり、除細動を急ぐ時に選択されます。そのほかの場合は、基本的に抗不整脈薬で除細動します。除細動を急ぐ時には抗不整脈薬の静注を選択し、それほど急がない時には経口薬を投与します。
●薬と治療法の選択について
心房細動に使える抗不整脈薬は16種類以上ありますが、数十分から数時間内の除細動にはナトリウムチャネル遮断薬が有効で、数日から数カ月かけて除細動を期待する時にはカリウムチャネル遮断薬が向いています。除細動をしたあとの洞調律維持には、カリウムチャネル遮断薬もナトリウムチャネル遮断薬も使えますが、有効率は前者で50~80%、後者で約50%前後です。除細動に際しては、除細動前から
心房細動が発症する時の状況で抗不整脈薬の選択順位が変わります。若い人では夜間や早朝、
運動時に心房細動が起こりやすい人はβ遮断薬か、β遮断作用をもつプロパフェノンを選択します。肝障害のある時には
レートコントロールとリズムコントロールのどちらを採用するのかについて、欧米でいくつかの試験結果が報告されていて、それらではいずれの試験でも、レートコントロールはリズムコントロールに劣るものではないことが示されました。
しかし、これらの試験の対象になったのは持続性心房細動の人がほとんどで、発作性心房細動の場合にどちらの治療方針を採用すべきかについては、明らかでありませんでした。日本で行われたJ-RHYTHM試験ではQOL(生活の質)の観点から発作性心房細動に対するリズムコントロールの優越性が示されました。
脳梗塞の予防には、
●薬物以外の治療法
多くの心房細動は、肺静脈を起源とした期外収縮が引き金になって生じたり、肺静脈内の頻拍が左心房内へ伝わって生じるようです。このような観点から最近では、肺静脈と左心房の間の電気的興奮を離断することによって心房細動を根治させるカテーテル・アブレーション(コラム)が行われるようになっています。成功率は60~90%といわれます。
また、心房を迷路のように区切って、心房細動を起こさないようにするメイズ手術もあります。
動悸や胸部の違和感などの症状が強い場合には、医療機関を受診すべきです。一方、症状はほとんどなく、脈の乱れだけが気になる場合がありますが、心房細動であれば将来起こりやすい脳梗塞の予防が必要になるため、近くの医療機関を受診して正確な不整脈の診断をしてもらうことが必要です。受診する科は内科、とくに循環器内科をすすめます。
生活上の注意は、期外収縮や他の不整脈と同様に、お酒の飲みすぎ、睡眠不足、過労、ストレスなどを避けることです。
杉 薫
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
(星野美穂 フリーライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
心房全体が正常に収縮せず、心房の各部分が無秩序に収縮する状態で、脈拍がまったく不規則で、大きさも大小不同になる場合が多い。心電図では心房筋の興奮を示すP波が消失し、心房筋の各部分の興奮を示すf波とよばれる細かい波が数多く現れる。心房細動の大部分は、僧帽弁疾患や高血圧性または虚血性心疾患、うっ血型心筋症など、左心房に負荷の加わる疾患にみられるほか、甲状腺(せん)機能亢進(こうしん)症にも多くみられるが、ときには心臓に異常がなくても心房細動が出現することがある。発作性に心房細動が出現すると、胸苦しさや動悸(どうき)を訴えて狭心症と誤られることもある。また心拍数が多くなると脈拍欠損をおこし、しばしば心不全の原因となるので、ジギタリス剤で心拍数を毎分60から80にコントロールする。さらに、心房細動を洞調律に戻す目的で電気的除細動も行われる。
[井上通敏]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報
…不整脈の治療に使われる器械で,主として心房細動(心房の収縮がなくなり細かい波状に動く状態),心室細動(心室の収縮がなくなり細かい波状に動く状態)を正常調律に戻すときに用いられる。心房細動や心室細動は心房筋,心室筋の各部分が電気的にばらばらに活動しているため起こるもので,除細動器は,心臓に直流の高圧電流を流して心臓全体を同時に収縮させた状態におき,全体の足並みを整える。…
※「心房細動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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