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心房細動 しんぼうさいどう

知恵蔵の解説

心房細動

不整脈の一種。
心臓は4つの部屋に分かれており、上部の右心房と左心房が血液を受け入れ、下部の右心室と左心室が血液を送り出すポンプの役割をしている。心臓は1分間に60~80回収縮し、リズミカルに血液を全身に送り出している。
心房細動とは、心房がけいれんを起こしたように細かく波打ち、心臓の補助ポンプとしてのまとまった働きがなくなった状態のこと。心房から心室への血液がスムーズに流れなくなり、心臓全体のポンプとしての効率が低下する。具体的な症状としては、急などうきや息苦しさ、胸の痛み、気分の悪さなど。冷や汗を伴うこともある。心臓弁膜症や心筋こうそく、心筋症など心臓に病気がある場合のほか、ストレスや寝不足、アルコールの飲みすぎなどで発症するといわれる。
治療は、症状を取りポンプ機能を回復させることを目的に、電気ショックや抗不整脈薬が用いられる。また、心房細動を起こすと血液の塊である血栓が生じやすくなる。血栓が血管に詰まると脳こうそくや心筋こうそくを引き起こすことがあるため、血液を固まりにくくする薬を使い、血栓を予防する治療も行われる。
一方、心室細動も心室がけいれんを起こしたように細かく波打つ発作のことを指すが、ポンプの役割を担う心室の働きが損なわれることで血液を全身に送り出せなくなり、脳の酸素不足による意識消失など命にかかわる重篤な症状を引き起こす。
心筋こうそくや肥大型心筋症、拡張型心筋症など冠動脈疾患を持っている人のほか、スポーツにおける急激な運動も心室細動の原因になりやすい。特に寝不足、ストレスを抱えた状態での激しい運動は危険である。
2002年11月にスポーツ中に急逝した高円宮憲仁(たかまどのみやのりひと)親王や、09年3月の東京マラソンでタレントの松村邦洋が心肺停止に陥った原因は、心室細動であった。
心室細動が起きた場合、直ちに電気ショックを与えてけいれんを止める治療(除細動)を行わなければならない。除細動を行わない場合、3分で脳死が起こるといわれる。最近は、AEDの普及により、救命率が高まってきている。

(星野美穂 フリーライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

心房細動

最も多い不整脈のひとつ。心臓の上部にある心房が細かくけいれんしたように震える状態になる。動悸(どうき)やめまい、不快感などの症状が出るが、はっきりとした症状がない場合も。一時的な発作や、発作が続くものなどがあるが、どのタイプでも血栓ができる危険性がある。発作を抑える薬を投与する治療法や、発作を起こす部分に細い管(カテーテル)を入れて不整脈の回路を焼き切る治療法などがある。高齢になるほど出やすく、高血圧、飲酒や喫煙、ストレスなどでも出やすくなる。

(2013-05-20 朝日新聞 朝刊 東特集V)

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デジタル大辞泉の解説

しんぼう‐さいどう〔シンバウ‐〕【心房細動】

心房が不規則に興奮する状態。心臓病・絶対性不整脈などの際にみられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

心房細動【しんぼうさいどう】

心房筋の各部分がそれぞれ無秩序に収縮する状態。心拍や脈拍は数,大小,調律が全く不規則となる。いわゆる絶対性不整脈の大部分はこれによる。心電図上細動波が現れる。僧帽弁不全症,心不全高血圧などの際に起こる。
→関連項目不整脈

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報

生活習慣病用語辞典の解説

心房細動

不整脈の 1 つで、心房内で起こる早く不規則な刺激により、心房全体が細かくふるえ、まとまった収縮と弛緩ができなくなる状態のこと。心臓内に血栓 (血のかたまり) ができやすくなり、脳梗塞危険因子です。

出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報

家庭医学館の解説

しんぼうさいどう【心房細動 Atrial Fibrillation】

[検査と診断]
 心房の中に異常な電気回路がたくさんでき、不規則な電気の旋回(せんかい)(空回り)がおこるために生じる不整脈(ふせいみゃく)です。主として後天的な原因でおこります。
 心房細動がおこると、心房が1分間に300から500回ほど電気的に興奮して細かく動きます。ただし、この電気信号は心室にそのまますべて伝わるわけではなく、房室結節(ぼうしつけっせつ)という変電所の役割をする部位で適当に間引かれて伝わります。しかし、電気が心室に不規則に伝えられるために、心臓は全体として1分間に60回から200回の頻度で不規則に興奮することになります。その結果、脈はまったくばらばらにうつようになるのです。
 心房細動は、心房細動発作がときどき出る発作性心房細動と、心房細動の状態がずっと続く持続性(慢性)心房細動とに分かれます。心房細動によく似た不整脈に心房粗動(しんぼうそどう)があります。これは心房の中で規則的な電気の旋回がおこるために生じるものです。
[原因]
 多くは、心房の拡大によるもの、そして老化により心房に電気的な異常が生じておこるものです。
 高齢者や、高血圧、肺疾患、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、弁膜症(べんまくしょう)のある人に多くみられますが、まったく病気のみられない人にもおこります。
[治療]
 心房細動をおこす原因疾患がある場合は、その疾患の治療をまず行ないます。原因疾患がなく、かつ症状もない場合は治療しなくてよいことが多いのですが、動悸(どうき)などの症状がある場合は治療が必要です。とくに、運動をしたり精神的に興奮すると一時的に房室結節の調節がきかなくなり、急に脈拍数が増え、息切れやめまいなどをおこすことがあります。
 発作性心房細動では、発作初期に血圧が下がり、意識を失うこともあります。このような場合は、脈拍数をコントロールする薬剤や発作自体をおこしにくくする薬が使われます。
 心房細動がおこると、心房は細かく動くだけで、十分に収縮することができません。そのため、血液がよどみ、心房の中に血栓(けっせん)(血液のかたまり)ができ、それが頭や手にとんでいって血管がつまる(梗塞(こうそく))ことがあります。そのため、最近では、なんらかの病気にともなう心房細動に対しては、脳梗塞(のうこうそく)予防のために、血液をかたまりにくくする薬剤(抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)または抗凝固薬(こうぎょうこやく))が使用されるようになっています。
[日常生活の注意]
 精神的ストレス、睡眠不足、疲労、発熱などは期外収縮(きがいしゅうしゅく)を増加させ、それによって頻脈(ひんみゃく)が誘発されやすくなります。発作性頻拍や心房細動のある人は、これらの誘因を避けるように心がけなければなりません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

大辞林 第三版の解説

しんぼうさいどう【心房細動】

洞結節からの規則的な刺激に反応せずに、心房が不規則で無秩序な興奮を生じている状態。心室の収縮も不規則になる。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

心房細動
しんぼうさいどう

心房全体が正常に収縮せず、心房の各部分が無秩序に収縮する状態で、脈拍がまったく不規則で、大きさも大小不同になる場合が多い。心電図では心房筋の興奮を示すP波が消失し、心房筋の各部分の興奮を示すf波とよばれる細かい波が数多く現れる。心房細動の大部分は、僧帽弁疾患や高血圧性または虚血性心疾患、うっ血型心筋症など、左心房に負荷の加わる疾患にみられるほか、甲状腺(せん)機能亢進(こうしん)症にも多くみられるが、ときには心臓に異常がなくても心房細動が出現することがある。発作性に心房細動が出現すると、胸苦しさや動悸(どうき)を訴えて狭心症と誤られることもある。また心拍数が多くなると脈拍欠損をおこし、しばしば心不全の原因となるので、ジギタリス剤で心拍数を毎分60から80にコントロールする。さらに、心房細動を洞調律に戻す目的で電気的除細動も行われる。[井上通敏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の心房細動の言及

【除細動器】より

…不整脈の治療に使われる器械で,主として心房細動(心房の収縮がなくなり細かい波状に動く状態),心室細動(心室の収縮がなくなり細かい波状に動く状態)を正常調律に戻すときに用いられる。心房細動や心室細動は心房筋,心室筋の各部分が電気的にばらばらに活動しているため起こるもので,除細動器は,心臓に直流の高圧電流を流して心臓全体を同時に収縮させた状態におき,全体の足並みを整える。…

※「心房細動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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