改訂新版 世界大百科事典 「電気加熱」の意味・わかりやすい解説
電気加熱 (でんきかねつ)
electric heating
electroheat
電気現象としての発熱原理を利用する加熱方法。略して電熱ともいう。外面からだけでなく被熱物内部から発熱させることができる,目的に応じ均一加熱も局部加熱も,また,真空,高圧ガス体中などの加熱も可能である,温度制御が容易にできる,燃焼加熱に見られる排ガスや燃えかすなどがない,2000℃以上の高温も得られる,などの特徴がある。応用面として,工業向けには,特殊鋼や普通鋼の電気製鋼,鋼の焼入れ,鋳物用鉄などの溶解,塗装乾燥,トランジスターなどの材料のゲルマニウム,シリコン結晶の製造などに広く利用され,一般家庭向けには,電気こんろ,シースヒーター,電子レンジなどが見られる。また,空調機器や低温の熱回収に用いられるヒートポンプも広義の電気加熱に含める。
発熱原理に基づき加熱方式を5分類する。(1)電源につないだ発熱体と呼ばれる導体のジュール効果を利用する抵抗加熱。被熱物へ放射,伝導,対流によって熱が伝えられる間接抵抗加熱,被熱物が直接発熱体となる直接抵抗加熱とに区別する。(2)主としてアークの発生熱を利用するアーク加熱。アークのプラズマ状態がより高度になるようくふうし,より高温加熱に適したものをとくにプラズマ加熱という。ふつう,前者は商用周波の交流を,後者は直流を使用する。アーク加熱で,被熱物中をアーク電流が流れるものを直接アーク加熱,流れぬものを間接アーク加熱と区別する。(3)交流の電磁誘導によって生ずる被熱導体中の渦電流損(ヒステリシス損も)による発熱を利用する誘導加熱。(4)高周波電界中に置かれた被熱誘導体(電気の絶縁物)中の誘電損に基づく発熱による誘電加熱。(5)赤外線放射による赤外線加熱。そのほか,電子ビームやイオンの衝突エネルギーによる加熱,レーザーによる熱加工もある。著しい進歩を遂げつつある電気,電子,制御技術の採用とあいまって電気加熱は高品質の材料,高度の加工を可能としている。
執筆者:市川 真人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報