宴席などで一座の者が順に立って舞うこと。古くからの宴における風習であったらしく,《日本書紀》巻十五の億計(おけ)王の新室の宴は〈夜深く酒酣(たけなわ)にして,次第(ついでついで)に儛ひ訖(おわ)る〉とあり,次々に立って舞うようすが記される。下って中世末期の多武峰(とうのみね)の延年台本に〈順々ノ舞〉と見えるが,延年などでは古くから参集の僧が位の順に舞うのが決りであったらしく,日光山輪王寺の《常行堂修正故実双紙》などにも具体的なようすが記されている。一般の宴会でも同様で,狂言《三人片輪》では〈いやいや順の舞じゃ,ひらに舞わしめ〉と強要している。宴の肴(さかな)の意味で肴舞の名称もあった。現在でも信濃,三河地方の雪祭や花祭の祭礼行事で,参集の役人が順次に神事舞の基本型を舞うことがあり,順の舞の名称を伝える。
執筆者:山路 興造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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