国指定史跡ガイド 「飛鳥池工房遺跡」の解説
あすかいけこうぼういせき【飛鳥池工房遺跡】
奈良県高市郡明日香村飛鳥にある工房跡。奈良盆地南端に位置する飛鳥の小さな丘陵部の谷間に所在。1991年(平成3)から実施された発掘調査の結果、飛鳥時代を中心とするさまざまな工具、漆壺、坩堝(るつぼ)、木製の雛型や炉跡などが検出されたことから、この地に金属製品、ガラス製品、漆製品などを製作した工房があったことが判明。2001年(平成13)に国の史跡に指定された。遺跡は、出土した土器や木簡などから7世紀後半から8世紀初頭のものと考えられ、谷のほぼ中央に設けられた東西塀を境に北地区・南地区に区分される。北地区では石敷き井戸、石組み方形池、導水路、官衙(かんが)風の建物などが検出されたほか、多量の木簡や33枚の富本銭(ふほんせん)も出土。遺構・遺物の性格から工房を管理する施設が置かれた地区と判断される。一方、南地区では谷底に水溜めと陸橋を組み合わせた汚水処理のための施設を設け、その両側に多数の炉跡をともなった建物が検出されたことなどから、各種の製品を製造した工房群が置かれた地区と考えられている。この遺跡は、飛鳥に所在する飛鳥寺などの大寺院、飛鳥浄御原(きよみはら)宮、藤原京などの宮殿・都城に深く関連した官営工房と推察され、7世紀後半における都城・寺院の整備、貨幣の鋳造などに関する実態を示している。近畿日本鉄道橿原線ほか橿原神宮前駅からコミュニティバス「万葉文化館西口」下車、徒歩すぐ。