飽く(読み)アク

デジタル大辞泉 「飽く」の意味・読み・例文・類語

あ・く【飽く/×厭く/×倦く】

[動カ五(四)]
十分になってもうたくさんだと思う。いやになる。「―・くことを知らぬ金銭欲」
「菜の葉にとまれ。菜の葉に―・いたら桜にとまれ」〈野村秋足蝶々
満たされた気持ちになる。満ち足りる。満足する。
「恥ぢらひ給ひける御さま、―・かぬ所なし」〈・葵〉
動詞の連用形に付いて、十分に…する、…することにあきあきする、の意を表す。
「繰り返して読んでも読んでも読み―・かなかった」〈二葉亭平凡
[補説]現代共通語では一般に「あきる」(上一)を用い、「あく」は文章語的な表現。また、「飽くまで」のような形で用いられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「飽く」の意味・読み・例文・類語

あ・く【飽・厭・倦】

  1. 〘 自動詞 カ行四段活用 〙
  2. みたされた気持になる。満足する。たんのうする。
    1. [初出の実例]「沖つ風いたく吹きせば吾妹子(わぎもこ)が嘆きの霧に安可(アカ)ましものを」(出典万葉集(8C後)一五・三六一六)
    2. 「『大夫殿、いまだ芋粥(いもがゆ)にあかせ給はずや』と問ふ。五位『いまだあき侍らず』といへば」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
  3. 十分になってもうたくさんだと思う。いやになる。飽きる。
    1. [初出の実例]「河のへのつらつら椿つらつらに見れども安可(アカ)巨勢(こせ)春野は」(出典:万葉集(8C後)一・五六)
    2. 「魚は水にあかず」(出典:方丈記(1212))
  4. ( 動詞の連用形に付けて補助動詞的に用いる ) 十分に…する。みちたりるほど…する。また、…することにあきあきする。
    1. [初出の実例]「かみなかしも、ゑひあきて」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二二日)
    2. 「何事も、いまはと見あき給ひにける身なれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕霧)

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