平凡(読み)ヘイボン

デジタル大辞泉 「平凡」の意味・読み・例文・類語

へい‐ぼん【平凡】

[名・形動]これといったすぐれた特色もなく、ごくあたりまえなこと。また、そのさま。「平凡作品」⇔非凡
[派生]へいぼんさ[名]
[類語]ありきたり凡俗ありふれる普通一般一般的尋常通常平常通例標準標準的平均的つねただ当たり前常並み世間並み十人並み月並み凡庸日常茶飯日常茶飯事平平凡凡常套決まりお定まり平板類型的紋切り型芸がないノーマルレギュラースタンダード世俗的通俗通俗的大衆的ポピュラー俗っぽい感傷的涙もろいセンチメンタル浪花節的

へいぼん【平凡】[書名]

二葉亭四迷小説。明治40年(1907)発表。もと文士の下級官吏回想の形で、作者自身の人生観文学観を示し、文壇を風刺した作品。

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精選版 日本国語大辞典 「平凡」の意味・読み・例文・類語

へい‐ぼん【平凡】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ありふれていて、特にすぐれた点のないこと。また、そのさま。なみなみ。凡庸。〔布令必用新撰字引(1869)〕
    1. [初出の実例]「平凡なる資質の人にて為し得らるる事なり」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉四)
    2. [その他の文献]〔朱熹‐斎居感興詩序〕
  2. [ 2 ] 小説。二葉亭四迷作。明治四〇年(一九〇七)発表。中年の小役人古屋が自らの人生を回想し、その人生観・文学観を告白記風に展開させる。作者自身の自己批判的要素が濃い。

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普及版 字通 「平凡」の読み・字形・画数・意味

【平凡】へいぼん

常なみ。宋・朱熹〔斎居感興二十首の序〕余(われ)陳子昂の感詩を讀み、~其の體に效(なら)はんと欲し、十數を作れるも、(おも)ふに思致にして、筆力萎(ゐじやく)なるを以て、(つひ)に就(な)す能はず。亦た其の理にならざるを恨む。

字通「平」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「平凡」の意味・わかりやすい解説

平凡 (へいぼん)

マガジンハウスから発行されていた月刊娯楽雑誌。前身の平凡出版は1945年合資会社凡人社として誕生,83年に社名をマガジンハウスと変更した。岩堀喜之助,清水達夫らの手で1945年12月創刊。誌名は1928-29年に同名の雑誌(国民雑誌をうたったが5号で廃刊)を出した平凡社より譲られたもの。48年2月号で判型をA5判からB5判へ大判化。創刊当初もっていた文芸色を払拭して,〈読む雑誌〉から〈見る雑誌〉に変貌,〈歌と映画の娯楽雑誌〉に徹底して以後若い読者層の爆発的人気をよび,53年新年号でついに100万部を突破したが,70年代後半あたりから衰退が目立ち始める。その後発行した姉妹誌《週刊平凡》(1959年5月創刊)とともに芸能誌全盛の一時代を築いたが,女性週刊誌,テレビの芸能ニュースなどを相手の芸能情報合戦に敗れて,1987年秋にそれぞれ廃刊された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「平凡」の意味・わかりやすい解説

平凡(二葉亭四迷の小説)
へいぼん

二葉亭四迷(しめい)の長編小説。1907年(明治40)10~12月『東京朝日新聞』連載。翌年、文淵堂(ぶんえんどう)・如山堂(じょざんどう)刊。元文士でいまは下級官吏の古屋雪江(ふるやせっこう)が半生を懺悔(ざんげ)する告白体の物語で、彼が愛犬ポチに対して無私の愛をもちえた少年時代から、「空想」を生命とする文学の毒にあてられて堕落し、父の死を契機に「実感」を取り戻して「平凡」な生活に入るまでの過程をいくつかのエピソードをつないで描く。それを通じて二葉亭晩年の人生や文学に対する懐疑が表され、当時流行の自然主義文学が風刺されている。

[十川信介]

『『平凡』(新潮文庫)』


平凡(娯楽雑誌)
へいぼん

娯楽雑誌。創業者岩堀喜之助(きのすけ)は平凡社社長の下中弥三郎(しもなかやさぶろう)よりこの誌名を譲り受け、1945年(昭和20)10月に凡人社を創立、文芸娯楽雑誌として創刊した。売れ行き不振により48年2月号からB5判の大衆娯楽雑誌に転身。続いて59年5月に『週刊平凡』、64年4月に『平凡パンチ』を創刊。スターを大衆の生活レベルで扱う、スターのタレント化を進め、読む雑誌から見る雑誌へ、そして『平凡パンチ』では読者とともに「する」雑誌をつくりだした。これらは、第二次世界大戦までの『キング』『講談倶楽部(くらぶ)』に代表される「講談社文化」にかわる、戦後の新しい大衆をとらえた「平凡文化」を確立した。54年6月、凡人社を吸収して平凡出版が設立され、『an・an』『クロワッサン』『POPEYE』『BRUTUS』『ダカーポ』などを刊行している。83年10月、マガジンハウスと社名を変更した。『平凡』は月刊、週刊とも、その使命を終えたとして1987年秋に休刊した。

[京谷秀夫]

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とっさの日本語便利帳 「平凡」の解説

『平凡』

二葉亭四迷
私は今年三十九になる。人世五十が通相場なら、まだ今日明日穴へ入ろうとも思わぬが、しかし未来は長いようでも短いものだ。過去って了えば実に呆気ない。\(一九〇七)

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