饑神(読み)ひだるがみ

精選版 日本国語大辞典 「饑神」の意味・読み・例文・類語

ひだる‐がみ【饑神】

  1. 〘 名詞 〙 山中などで人を急に空腹にさせるという神。
    1. [初出の実例]「ひだる神花のあたりに暮にけり 柳山吹しだれあふ中〈尺艸〉」(出典:俳諧・若葉合(1696))

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改訂新版 世界大百科事典 「饑神」の意味・わかりやすい解説

ひだる神 (ひだるがみ)

西日本に多い憑物(つきもの)の一種で,とくに空腹時に憑かれることが多い。ダリ神ダリ仏ダニダラシ,ジキトリ,ヒモジイ様,イザリ神などともいい,餓鬼無縁仏に憑かれる例や,歩行中に出会う〈行逢神(いきあいがみ)〉も同系統のものといわれている。この神に憑かれると急に空腹を覚え,冷や汗がでたり,手足がしびれて足腰が立たずに一歩も進めなくなるという。ヒダル神の実体非業の死をとげたり,行倒れなどしてそのまままつられずに山野をさまよっている死霊だとされる。これに憑かれる場所はほぼ一定していて峠道などが多いが,このほか火葬場付近や海上で憑く例もある。こうした場所を通る際や神に憑かれたときには弁当や食物の食べ残しを一口食べたり近くのやぶに投げすてるとよいといわれ,何も食物がないときには米という字を手のひらに書いてなめるとよいともいう。ヒダル神は人だけでなく,牛にも憑くことがあり,このため岡山県ではあらかじめ牛の尾先を切り,血を出しておくとよいと伝えている。また愛知県北設楽郡の花丸峠には非人の行倒れをまつったというダリ仏の石像がまつられている。
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